保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

茂木健一郎氏のテレビクイズ番組批判について

脳科学者の茂木健一郎氏(58)が7日、ツイッターでクイズ番組「東大王」に苦言を呈した。

「東大王」とは幅広い知識を持つ東大生がクイズで芸能人と争う人気番組。ここから出た豊富な知識を持つ東大生が様々な番組で活躍している》(東スポ 3/7(日) 12:34 配信)

 この件に関しては私も「一家言」(いっかげん)ある。

 出演者方は「豊かな知識」をお持ちである。私など足元にも及ばない。が、それだけ「豊かな知識」をお持ちなら、もっと社会の役に立つことにその知識を使って頂けないか、ということである。

 世の中にはクイズのように白黒付けられないような複雑な問題がたくさんある。が、複雑であるがゆえに答えを出すことは容易ではない。世間が納得する回答が導き出されなければ評価も得られない。評価されないから報酬も見込めない。

 が、だからと言ってこのような問題を放置して良いわけはない。答えが出なくても答えを出すべく誰かが努力することが文明社会の維持、発展にとって不可欠である。

 当たり前であるが、こういった問題に取り組むには高い能力を必要とする。が、「お金」にならない、評価もしてもらえない。そんな課題に興味関心を持ち、取り組もうとするのは余程「奇特」な人と言うべきである。それよりはテレビ番組でクイズに答えて自尊心を満たしつつ、楽にお金を稼ぐ方が良いと考えるのも今の世の中無理もない。

 さて、クイズ番組が宜しくないのは、茂木氏も指摘しておられるように、視聴者に勉強というものを「底の浅い」ものに見せてしまうということであろう。「砂上の楼閣(ろうかく)」と言っても良い。立派な建物は砂地の上には立たない。立派な建物を建てようとするなら、まずはしっかりとした基礎を築くことが必要だということである。

 サンテグジュペリ星の王子さま』に「本当に大事なものは、目に見えないものだ」という台詞(せりふ)があるけれども、これを文字って言えば、「本当に大事なものは、クイズの答えのように簡単に白黒付けられないものだ」とでも言えるだろうか。

 「能ある鷹は爪を隠す」という諺もある。クイズ番組はこれと正反対である。知識をひけらかして名声を得、お金を手に入れる。このように爪を隠さぬ鷹は果たして<能>があると言えるのだろうか。

 「教養」はひけらかすものではなく、滲み出るものである。ひけらかした途端、それは「教養」ではなくなる。クイズ番組に登場する人達は、「知識オタク」とでも言うべきなのではないだろうか。