保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

九州豪雨について(4) ~線状降水帯はPM2.5の仕業ではないか~

雲を形成するためには、雲核(うんかく)と呼ばれる微粒子が必要である。つまり、多量の水蒸気があっても、雲核がなければ雲は形成されない。

 今回の豪雨は、「線状降水帯」が発生したことによるものだと言われている。

《今回の大雨は、九州付近に停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気が流れこみ、発達した雨雲が帯状に連なる線状降水帯が形成されたためとみられる。同じ場所で次々に積乱雲が発達し、長時間、雨が降り続けた》(7月5日付朝日新聞社説)

 つまり、同じ場所に雲核となる微粒子(大気エアロゾル粒子)が次々と注ぎ込まれたということである。このようなことは自然現象としては起こり得ない。よって私は、それは大陸由来のPM2.5によるものなのではないかと睨んでいる。私には検証する術(すべ)はないので、専門家の研究を待つしかないが、そのように考えれば合点がいく。

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 気象庁レーダーによって観測された熊本県南部で豪雨が発生していた際の降水強度分布(mm/h)(令和2年7月4日・日本時間午前2時15分)

 南方からの暖かく湿った空気に北方からの大気エアロゾル粒子PM2.5が注ぎ込まれ次々と積乱雲が形成されたのではないかというのが私の仮説である。数十年に一度と言われるような豪雨が毎年のように繰り返されているのと、近年PM2.5の飛来が問題となっているのとが重なり合うのである。

 大陸の環境問題が改善されない限り、今回のような線状降水帯が形成された集中豪雨は梅雨のこの時期毎年のように引き起こされかねない。だとすれば、今後日本はシナの大気汚染改善に向けて積極的に関わっていかざるを得ない。

球磨川日本三大急流の一つで、流域は水があふれやすい地形で何度も深刻な浸水被害に見舞われている》(7月6日付神戸新聞社説)

 ここで思い起こされるのが、物理学者・寺田寅彦氏の警句である。

《文明が進む程天災による損害の程度も累進する傾向があるといふ事實を充分に自覺して、そして平生からそれに對する防禦策を講じなければならない筈であるのに、それが一向に出來ていないのはどういふ譯であるか。その主なる原因は、畢竟(ひっきょう)そういふ天災が極めて稀にしか起らないで、丁度人間が前車の顛覆(てんぷく)を忘れた頃にそろ々々後車を引き出すやうになるからであらう。

 併(しか)し昔の人間は過去の經驗を大切に保存し蓄積してその敎(おしえ)に頼ることが甚だ忠實であつた。過去の地震や風害に堪へたやうな場所にのみ集落を保存し、時の試煉に堪へたやうな建築様式のみを墨守して來た》(「天災と国防」:『寺田寅彦全集』(岩波書店)文學篇 第五巻、p. 182)

 ダムや堤防の整備も重要であるが、歴史を少し繙(ひもと)いて、予(あらかじ)め水害を避けるということも賢明なことではないだろうか。【了】