保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

日米豪印「安全保障ダイヤモンド」構想について

《オーストラリアとインドが安全保障面の協力強化で合意した》(6月23日付産經新聞主張)

 産經主張子はこれを歓迎する。

《日米が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想の具体化に資する意義は大きく、歓迎したい》(同)

 外務省HPには次のような説明が見られる。

《インド太平洋地域の厳しい安全保障環境、海賊、テロ、大量破壊兵器の拡散、自然災害、違法操業といった様々な脅威は一層顕在化しており、地域諸国が「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて協力する必要性はますます高まっています。

こうした様々な脅威を取り除くとともに、国際スタンダードにのっとった「質の高いインフラ」整備等により域内の連結性を高めることなどを通じて、インド太平洋地域における法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することにより、この地域をいずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらす「国際公共財」とすべく、日本は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進しています》(外交青書2019 特集:「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために)

 この構想に先立つ形で「アジアの安全保障ダイヤモンド」構想というのがあった。

 

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  2012年12月27日、安倍晋三首相が国際NPO団体「Project Syndicate」に発表した英語論文『Asia's Democratic Security Diamond』を一部抜粋し確認しておこう。

Peace, stability, and freedom of navigation in the Pacific Ocean are inseparable from peace, stability, and freedom of navigation in the Indian Ocean. Developments affecting each are more closely connected than ever. Japan, as one of the oldest sea-faring democracies in Asia, should play a greater role in preserving the common good in both regions.

(太平洋の平和、安定、航行の自由は、インド洋の平和、安定、航行の自由と切り離せない。相互に影響し合う発展は、これまで以上に密接につながっている。日本は、アジア最古の海洋民主主義国の1つとして、両地域の共通利益が損なわれぬよう、より大きな役割を果たさねばならない)

I envisage a strategy whereby Australia, India, Japan, and the US state of Hawaii form a diamond to safeguard the maritime commons stretching from the Indian Ocean region to the western Pacific. I am prepared to invest, to the greatest possible extent, Japan's capabilities in this security diamond.

(インド洋地域から西太平洋に広がる海洋共有地を保護するために、オーストラリア、インド、日本、アメリカのハワイ州が1つのダイヤモンドを形成する戦略を私は思い描いている。この安全保障ダイヤモンドに、最大限可能な範囲で、日本の能力を投じる準備がある)

democracy, the rule of law, and respect for human rights…These universal values have guided Japan's post-war development. I firmly believe that, in 2013 and beyond, the Asia-Pacific region's future prosperity should rest on them as well.

(民主主義、法の支配、人権の尊重…これらの普遍的な価値は、日本の戦後の発展を導いた。2013年以降、アジア太平洋地域の将来の繁栄もこれらの価値に基づくべきだと私は確信している)

 権威主義共産党の支配、人権蹂躙のシナに対抗する意味でこのように言うことは分かるし、国際政治的にはこのように言うしかないのだと思う。

 が、戦後日本が受け入れた西欧産の価値観は決して絶対的なものではない。各国にはそれぞれ独自の文化があり歴史がある。日本にも日本の文化があり歴史がある。それを踏まえての国際協調でなければならないということだけは忘れてはならない。