保守論客の独り言

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大阪維新快勝について(3) ~漸進的変革の必要性~

《これで都構想に全面的なお墨付きが与えられたわけではない。構想に反対する対立候補にも一定の票が投じられた。府・市議会の協力も欠かせない。

 選挙は維新と、対立した自民、公明など反維新勢力の間に深い溝を残した。分断を修復し、円滑な府・市政の運営を優先してもらいたい。分断の原因となってきた都構想以外にも、府市の課題は山積している》(4月8日付産經新聞主張)

 確かに<全面的なお墨付きが与えられた>わけではない。が、このような分かり切ったことを改めて断って頂かなくても結構である。

 一方、<都構想以外にも、府市の課題は山積している>という話は一般論に過ぎ、具体的にどのような課題があるのかを挙げる必要がある。具体的課題が整理されずに抽象論で済ませてきたことが、反維新側が支持を得られなかった最大の理由ではなかろうかとも思われる。

《ただ都構想の効果は未知数だ。維新が主張するように、二重行政の解消につながる部分はあるかもしれない。一方で、対立候補が訴えたように、大阪市を廃止することによるコスト負担などの不安もつきまとう。

 大阪の再浮上につなげるための熟議は必要だ。だがまず優先されるべきは、府市の健全運営であることを忘れてはならない》(同)

 都構想反対派の私が説明するのも変だが、都構想の一番の効果は<二重行政の解消>などというちゃちな話ではなく、新たな体制構築による権益の総見直しということにある。遅々として進まぬ議論という手法ではなく、抜本的構造改革によって、既得権益体制を打破しようということである。

 つまり、都構想の是非とは、裏返せば既得権益の是非ということであり、右肩上がりの高度成長期までに作られた金食い虫の体制を一掃し、大阪が成長出来る新たな体制づくりを行おうというのが都構想なのである、否、のはずである。

《首長と議会の「ねじれ」は地方自治の二元代表制が緊張感を持って機能することにもつながる。住民投票の対象となる大阪市で、それが生じた意味を前向きに受け止めるべきだ。

 都構想を巡る政治的対立はほぼ10年にわたり府民を巻き込んできた。どんな道筋で決着させるのか、首長と議会双方が民意を真摯(しんし)に受け止め、合意形成に努力しなければならない》(4月9日付神戸新聞社説)

 「ねじれ」がもたれ合いや馴れ合いになることも少なくなく、どうして緊張感につながるのかよく分からないが、少なくとも急進的な変革へのブレーキとなることだけは確かであろうと思われる。「変革しました。でも目論見が外れて失敗しました」では許されない。変革には想定外の問題が発生することが少なくなく、これらに適宜対応するためには変革の速度を抑える必要がある。

 が、現状維持では「じり貧」を免れないのであるから、ゆっくりと、が、着実な変革、すなわち「漸進(ぜんしん)的変革」が必要だということである。

 急進的変革か現状維持かの二者択一で綱引きをしていても大阪が再浮上することはない。【了】