保守論客の独り言

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沖縄県知事選結果について(3)~米国の意向は日本の民主主義とは無関係である~

《知事選の結果を受け、安倍首相は「選挙結果を真摯に受け止める」と述べた。そうであるなら、これまでの強硬な姿勢をまずは改める必要がある。今月4日に知事に就任する玉城氏は「はなから対立や分断の立場を取るつもりはない」とし、国と協議したいとの意向を示している。政府は速やかに、沖縄県との対話を再開するべきだ》(山陽新聞社説)

 辺野古移転は政府と沖縄が話をして決めるような話ではない。宗主国米国と保護領日本が話し合って決めたことは変えられないのである。こと安全保障問題に関する限り、日本は米国の言い成りになるより他はない。それが戦後体制なのである。山陽社説子はこの基本構造が分かっていない。

 もし、辺野古移転はノー、なおかつ普天間は返還せよというのであれば、それは沖縄から米軍に出て行ってもらうということになる。が、沖縄から米軍がいなくなり、これに乗じて尖閣諸島に中国が食指を伸ばせば、日本が単独でこれを阻止せねばならなくなり、領有権を死守するのは難しくなってしまうだろう。そして次は沖縄というような「ドミノ倒し」のように日本が中国に侵食されてしまいかねないのである。

日米安保条約に基づく在日米軍の存在が日本の安全保障の要であることについて、国民の間でそれほど意見対立があるわけではない。

 問題の核心は、日米安保のメリットは日本全土が受けているのに基地負担は沖縄に集中するという、その極端な不均衡にある》(毎日新聞社説)

 一見、非常に現実的な意見にも見えるが、これもまた現実に埋没した考え方のように思われる。いつまで日本は米軍に国を守ってもらわなければならないのか。おそらく毎日社説子は、米国ウィークジャパン派と同様に、日米安保は日本の軍拡を抑え込む「ビンのフタ」という考え方なのであろう。

 が、このような体制はいつまで続くのか分からない。米国がさらに凋落(ちょうらく)し続ければ、いつ米軍を日本から撤退させると言い出すか分からない。そうなっては国を守ることは能(あた)わなくなる。

 否、それは皮相な話である。本来的問題は、日本が独立国たらんとするのであれば、自分の国は自分で守るべきだ、その気概が必要だということである。自分たちで自分たちの国を守る気概のない独立国とは一体何なのか。

《民主主義国家では最終的に多数決で政策が決定されるが、議論を尽くしたうえで少数派の意見を可能な限り取り入れることが前提となる。

 外交・安保は政府の専権事項だからといって、圧倒的な多数派の本土側が少数派の沖縄に不利益を押しつけるのを民主主義とは言わない》(同)

 これもまた戦後日本の安全保障における基本構造が分かっていない話である。沖縄に基地が集中しているのは、地政学的意味合いが大きく、米軍が軍事行動を展開するのに都合が良いからである。日本の本土の人たちが沖縄に<不利益>を押し付けているわけではない。

 民主主義、民主主義と言うけれども、外交上の問題に民主主義など成立しない。たとえ日本人の過半数辺野古移設に反対であっても、そんなことは米国は与(あずか)り知らぬことである。残念ながら、それが戦争に負けたということなのである。【了】