保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

新潮45「杉田水脈論文」その後(2) ~LGBは弱者か?~

かずと氏は尾辻議員に向け語りかける。

《あなたはLGBTに税金を投入する必要がない…LGBTの中でも本当に支援が必要なのはTの中の一部の方だけだと分かっている。しかし、それを認めてしまえば、これまでの主張がすべて覆る…Tの方の問題をLGBT全体の問題としてきたことです。更衣室やトイレ、制服といった問題、履歴書や各種書類の性別記載、いずれもTの方の問題でLGBには何ら関係ありません》(「騒動の火付け役『尾辻かな子』の欺瞞」:新潮45』2018年10月号、p. 99)

 誤解のないように確認するが、<LGBTに税金を投入する必要がない>とは、「LGBTを特別に保護すべき弱者と見做(みな)し、全国民に平等に与えられた福祉的権利だけでは不十分だと考え、税金を追加投入する必要はない」という意味である。

《LGBというのは単に同性愛者か両性愛者かといった性的指向の話です。生きづらく感じる点は確かにあるでしょう。だからといって公的な支援が必要かといえばノーですよね。進学、就職、日常生活においても同性愛者、両性愛者であることは何ら関係ない。財産関係の問題なども実は養子縁組ですべてクリアできてしまう。これに対しTの方は自らの性別に違和感があるという性自認の問題があり、LGBとは抱えていることがまるで違う。LGBTの中でもLGBに関しては社会的弱者でも何でもない、支援の必要は一切ない、そのことをレズビアンの当事者である尾辻さんは分かっている》(同)

 LGB(レズ・ゲイ・バイセクシャル)は「社会的弱者」ではない、だから特別に支援策を講ずる必要はない、と言うかずと氏に私も同感である。また、Tは別にして考えるべきであることは杉田衆院議員も指摘している。

《そもそもLGBTと一括りにすること自体がおかしいと思っています。T(トランスジェンダー)は「性同一性障害」という障害なので、これは分けて考えるべきです。自分の脳が認識している性と、自分の体が一致しないというのは、つらいでしょう。性転換手術にも保険が利くようにしたり、いかに医療行為として充実させていくのか、それは政治家としても考えていいことなのかもしれません》(『新潮45』2018年8月号、p. 59)

 次に、潮匡人(うしお・まさと)氏が指摘したNHKのテレビ番組「ニュースウオッチ9」(平日21時~22時)の話に移ろう。

《去る8月3日放送で特集した杉田水脈衆議院議員へのバッシングは目に余った。非難の的は「新潮45」8月号に掲載された杉田代議士の寄稿文。そのごく一部を切り取り、一面的から独善的に報じながら、「難病患者支援団体の女性事務局長」に、こう語らせた。

「杉田議員の文章を読んで、真っ先にひらめいたのは(相模原障害者殺傷事件の)植松(聖・被告人)と根っ子は一緒だ」》(『新潮45』2018年10月号、p. 110

 件(くだん)の女性事務局長が個人的に相模原障害者殺傷事件の植松被告を連想するのは勝手である。が、それをテレビ番組内で語らせるとなると黙過できない。

 杉田論文はLGBTを過保護扱いする必要はないと言っただけで「排除の論理」ではない。にもかからわず、相模原障害者殺傷事件を持ち出して<根っ子は一緒>などと言えば、杉田論文があたかも「排除の論理」で書かれたかのように多くの視聴者は受け取るだろう。

 これは女性事務局長の問題というよりも、このような番組構成をしたNHK側の問題である。

《「ヒトラーの優生思想」と同根と断じながら、「反発」が広がっている等々、約10分間にわたり非難一色の「報道」を続けた。主権者たる国民に選ばれ憲法上、不逮捕特権も与えられている国会議員を、わが国の犯罪史上でも稀な重大凶惑殺人犯と同視し、同根と断じたわけである》(同、pp. 110-111【続】