保守論客の独り言

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新潮45「杉田水脈論文」その後(1) ~「生産性」は言葉選択の誤り~

自民党杉田水脈(すぎた・みお)衆院議員が月刊誌『新潮45』8月号に寄稿した『「LGBT」支援の度が過ぎる』と題する論考が大きな批判を浴び、この批判への反論として同誌10月号に『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』という特集が組まれた。この攻防を検討してみたい。

 まず、本題に入る前に確認しておきたいのは、非難の的となった「LGBTには生産性がない」という言葉における問題である。正確には、

《彼ら彼女らは子供を作らない。つまり、「生産性」がないのです》(『新潮45』2018年8月号、pp. 58-59

である。この鉤括弧付きの「生産性」という言葉は、一般的な意味での生産性ということではなく、文脈に依存する意味における「生産性」ということである。

 この点に関し、反論者の一人である藤岡信勝氏は、

《「生殖」を「生産」に置き換える用語法は、マルクス主義に親近性がある》(『新潮45』2018年10月号、p. 80

と指摘している。例えば、上野千鶴子『家父長制と資本制 マルクス主義フェミニズムの地平』(岩波現代文庫)には次のような記述が見られる。

《「自然」の崩壊と「家族」の解体は、モノの生産とヒトの生産について、「市場」というシステムが、何を支払ってきたか(そして何を支払ってこなかったか)を、私たちの目の前に明示した》(p. 11

 杉田論文の「生産性」という言葉もマルクス用語と見れば合点がいく。が、そのようなことは「論壇村」の人々ならいざ知らず一般読者には分かるはずもないし、与(あずか)り知らぬことであろう。という意味で、やはり杉田議員は用語選択を誤ったのだと私も思っている。

 さて、『新潮45』10月号には7人の反論が掲載されている。中でも秀逸と思われるのが、ゲイであるかずと氏のものである。かずと氏は、騒動の火付け役たるレズビアン尾辻かな子衆院議員と杉田水脈衆院議員のやり取りをみていてある「おかしさ」に気付いたという。

杉田水脈自民党衆議院議員の雑誌『新潮45』への記事。LGBTのカップルは生産性がないので税金を投入することの是非があると。LGBTも納税者であることは指摘しておきたい。当たり前のことだが、すべての人は生きていること、その事自体に価値がある」(尾辻ツイッター7月18日付)

 尾辻議員は杉田論文がしっかり読めていない。杉田議員は次のように返した。

「税金を投入する=福祉を活用する人=社会的弱者です。LGBTの方々は社会的弱者ですか?LGBTの方々でも、障害者の方は障害者福祉を低所得者の方は低所得者福祉を高齢者の方は高齢者福祉を受けられます。年金も生活保護も受けられます。当たり前のことです。」

「その点に於いて日本の中で何ら差別されていないし、また差別すべきではないと思います。納税者として当然の権利は行使できます。その上で、何かLGBTの方々だけに特別に税金を注ぎ込むような施策は必要ですか?」(杉田ツイッター7月18日付)【続】