保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

「若者が『朝日新聞ぎらい』になった謎」などという謎の話(2)

戦後日本に吹き荒れた共産主義思想を知らぬがゆえにおかしな先入見を持たぬ若者たちが朝日新聞を好きになる謂(いわ)れはない。否、「反権力」を標榜して実際やっていることと言えば政権の足を引っ張ることだけでは嫌われて当然なのである。

 にもかかわらず、若者が朝日新聞嫌いになったのが「謎」だと言うとすれば、元木氏は余程偏見で目が曇ってしまっているに違いない。

 橘玲(たちばな・あきら)氏は言う。

《年配の人は当たり前のように安倍政権は右で共産党は左だと思っているけれど、実は30代ぐらいを境にして左右逆転して、今の若者は自民党がリベラルで共産党は保守だと思っています》(「若者が『朝日新聞ぎらい』になった謎を考える」:「現代ビジネス」9/11() 17:00配信)

 橘氏の言う<年配の人>の代表が政治家でありマスコミである。安倍晋三氏をヒトラーにたとえ、安倍政権の暴走を許すなとやってきたのが左寄りの人たちであった。が、「1億総活躍社会」を看板に掲げる安倍政権は「大きな政府」を志向する政権であり福祉主義的である。したがって、安倍政権を否定すればするほど、本来の自分たちが居るべき場所がなくなってしまうという構造にある。

 安倍政権の政策は「リベラル」と呼ぶに相応しい。にもかかわらず安倍政権を「右」ましてや「極右」と言っている人たちは、座標軸から左にはみ出てしまい、現実から乖離(かいり)した時代遅れの「吹き溜まり」のような存在でしかなくなった。

 <自民党がリベラルで共産党は保守だ>の基軸にあるのが「戦後体制」である。自民党は戦後体制を改革しようとしているという意味で「リベラル」であり、共産党は固守しようとしているという意味で「保守」ということになる。

 が、誤解してはならないのは、安倍政権は何をどう改革しようとしているのかということである。なるほど第1次安倍政権は、「戦後レジームからの脱却」を掲げていた。が、今の安倍政権はむしろ戦後の不具合を改革し「戦後レジームの完成」を目指しているかのようである。つまり、今行われている政治の綱引きは、戦後体制をそのまま維持するのか「改善」するのかの違いであって、敗戦によって寸断された日本の文化伝統を取り戻すためのものではないということである。その意味で今の日本の政治には「真正保守」は存在しないのだと思われる。

《若者が保守化したのではなく、ずっとリベラルなままなのに、かつての「リベラル政党」が保守化してしまった。その結果、現実的な政治をする自民党しか選べなくなったと考えると、今起きていることがすっきり理解できます》(同)

橘氏は言う。が、若者がずっと「リベラル」なままというのは何をもって言っているのだろうか。若者は安倍政権のリベラルな政策を支持していると言うよりも現状を肯定しているに過ぎないのではないか。これは「リベラル」でも何でもない。(続)