《県財政は改善基調にあるものの、阪神・淡路大震災関連の県債(借金)の償還はなお続く。斎藤氏が県政の柱に据えて取り組んできた行財政改革や、地域経済の活性化の道筋をどう描くのか。若年層らの人口流出や過疎化にどう歯止めをかけるのか。県庁舎再整備への対応、南海トラフ地震などの防災・減災対策も急がれる。
必要な施策を打ち出すには財源を確保しなければならない。県民の理解を得ながら事業の見直しにも大胆に切り込む手腕が問われる》(2024年11月18日付神戸新聞社説)
課題をただ羅列しても意味がない。課題に減(め)り張りを付け、どのような優先順位で事に当たるのかが問われるのである。
が、それは一般論であって、今回に限っては、やはり県民の信頼回復が最優先されなければならないし、県知事と県職員との関係修復も大きな課題となろう。知事と職員がいがみ合っていては、やれることもやれなくなってしまう。
《県議会との関係にも注文しておきたい。前回選で斎藤氏を推薦した自民党は独自候補を擁立できず、斎藤氏や前尼崎市長・稲村和美氏らの支援で分裂した。同じく斎藤氏を推薦した日本維新の会は離党した清水貴之前参院議員を支援した。全会一致で退任を迫った斎藤氏に県議会がどう向き合うか注目されるが、知事は議会との緊張感を保ちつつ対話を重ね、県政の正常化に努めるべきだ》(同)
選挙と順序があべこべであるが、やはり百条委員会で一定の結論を出すのが先だろう。今回の醜聞に決着を付けずして県政の正常化など有り得ない。
《選挙戦では、各陣営が交流サイト(SNS)を駆使し演説などの動画や写真を拡散した。無党派や若年層への浸透効果は大きく、斎藤氏を再選に押し上げた要因とされる。
一方で、真偽不明の情報や他陣営への攻撃などが飛び交う異様な展開となった。根拠のない主張や誤情報で対立をあおり、地域の分断を深めるような状況は看過できない。
インターネット選挙運動の解禁から約10年が過ぎ、社会のデジタル環境も変化した。SNSを活用した「ネット世論」が投票行動に与える影響も無視できなくなっている。新聞など既存メディアの選挙報道にも厳しい目が向けられた。
7月の東京都知事選でも問われたポスター掲示板や政見放送の在り方を含め、民主主義の根幹である選挙への信頼をどう保っていくべきか。言論や表現の自由などに配慮しつつ、ネットと選挙のあるべき姿を真剣に考えなくてはならない》(同)
あれも問題、これも問題では、問題をただ掻(か)き回しているだけである。オールド・メディアの信頼回復のためには、新聞が世論を誘導するのをやめ、偏見のない「生の情報」を報道することに徹するのが何よりも必要なのではないか。