保守論客の独り言

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兵庫県知事選にみるデモクラシーの限界【新連載】(1)神戸社説その1

11月17日(日)に投開票された兵庫県知事選で斎藤元彦前知事が再選された。

 翌日の朝刊に社説を掲げたのは、地元の神戸新聞と、産経新聞の2紙だけであったので、まずこの2紙を優先し、社説を検討する。

《今回の選挙は、斎藤氏のパワハラ疑惑などを告発した文書への対応の適否や、知事に求められる資質とは何なのかが主要な争点となった》(2024年11月18日付神戸新聞社説)

 本当にそのようなことが「争点」だったのだろうか。〈知事に求められる資質〉って何だ。それが今回の選挙で明らかになったのか。

 〈斎藤氏のパワハラ疑惑などを告発した文書への対応の適否〉というのもとても「争点」と呼べるものではない。〈対応の適否〉ということは、対応が良かったか悪かったかということなのか。そうではなく、知事職を継続できないほどのパワハラが本当にあったのかどうかが重大な判断材料だったはずである。が、パワハラがあったかなかったかなど選挙戦で明らかになるはずもなく、要は、今回の選挙は「泥仕合」でしかなかったということなのだろうと思われる。

《文書問題は3月、元西播磨県民局長が告発して表面化した。斎藤氏は真実相当性がない誹謗(ひぼう)中傷だとして元局長を作成者と特定し解任した。元局長は改めて県の窓口に公益通報したが、県はその調査を待たず、5月に内部調査に基づき懲戒処分とした。元局長は7月に死亡した。

 県側の対応を巡り、専門家らは「公益通報に当たり告発者の保護が必要」と指摘するが、斎藤氏側は「誹謗中傷であり、公益通報には該当しない」と一貫して否定してきた。

 文書が記した内容の真偽や対応の問題点は、県議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)や、弁護士でつくる第3者委員会による究明が続いており、結論は出ていない。

 それでも斎藤氏への批判の高まりを受け、県議会は不信任決議を急いだ。結果を待たずに選挙戦に突入し、有権者の判断を難しくした側面は否定できない》(同)

 問題が十分に解明されることなく、今回のような知事選になれば、有権者は誰に投票してよいのか分からなくなってしまう。その意味では、私は、不信任決議を急いだ県議会の失態だったと思っている。

《斎藤氏は文書問題について「1つ1つの局面や状況で、取り得る最善の対応をしてきた」と主張しつつ、「反省すべきは反省し改める」と訴えた。今後は公益通報制度の運用改善に加え、職員との意思疎通や、壊れた信頼関係の再構築が必須となる。選挙で勝利したからといって疑惑が解消したわけではない。説明責任を引き続き果たさねばならない。

 県議会の責任も重い。今後の百条委では党利党略や感情論に走らず、丁寧な審議で全容解明に取り組むことを求める》(同)

 が、疑惑の知事が有権者の信認を受け再選されてから百条委員会で全容を解明するなどというのは意味不明である。【続】