保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

石破新首相の所信表明演説について(12)日経社説その1

《経済政策では「デフレ脱却を確かなものにする」と物価上昇を上回る賃上げの定着を掲げた。「資産運用立国」を引き継ぎ産業に思い切って投資する「投資大国」をめざす。「経済あっての財政」「成長と分配の好循環」を含めて岸田文雄前政権の踏襲が際だつ》(2024年10月5日付日本経済新聞社説)

 日本が自由主義国である限り、賃上げを政府が主導するのはおかしい。政府がすべきことは、どうして日本はデフレに苦しみ続けているのかをまず理解することである。デフレの原因を把握し理解することなく、ただ表層的にデフレ脱却を言うのは、それが世間受けのためでしかなく、本気ではないからであろう。実際、いつまでたってもデフレを脱却することが出来ていない。

 賃金が上がらない最大の原因は、円安経済にあると私は考える。少子高齢化が進む日本は、今後国民一人当たりの生産性を高めることが必要だ。言い換えれば、経済構造を高付加価値型に転換する必要があるということだ。そのためには、円安状態は不都合なのである。

 円安によって、日本の企業は、帳簿の上で潤った。が、同時に、「国富」はドルベースで見て大幅に目減りしてしまった。エネルギー資源を輸入に頼る日本は、電気・ガス・ガソリン価格が高騰することは避けられない。原発を稼働させれば、電気代を下げることが出来るのにそれもやらず、脱炭素政策によって、むしろ負担はますばかりである。これでは、新規設備投資もままならない。

 また、労働者人口減少によって人手不足が発生すれば、自ずと賃金は上昇するはずであるのに、外国人労働者を受け入れることで、賃金上昇をむしろ抑えてもいる。低賃金労働でなければ成り立たない旧態依然とした産業形態が温存され、このままでは日本はますます時代から取り残されていくことになる。

《足元の物価高対策は「低所得者世帯への支援」を強調したが、一律のバラマキ型に終わらないよう無駄を省くワイズスペンディング(賢い支出)に徹すべきだ》(同)

 社説子の言う〈ワイズスペンディング〉とは具体的にどういうことを意味しているのか。いかにも政策通であるかのように、カタカナ語を口にするのは、世間を煙(けむ)に巻くただの誤魔化(ごまか)しにしか思われない。wise(賢い)かどうかは結果次第である。が、結果と言っても何をどう見るのかによって評価は異なってくるから、wise spending など具体性を欠いた抽象語にしかならない。

《外交・安全保障の基軸となる日米同盟を一層強化するとしたのは当然である》(同)

 安倍政権は、集団的自衛権行使容認にまで踏み込んだ。だとすれば、〈一層強化〉とは、さらに踏み込んで、例えば、台湾有事が起これば、自衛隊も参戦するというような話になるのだろうか。〈当然〉などと言って聞き流せるようなことではない。