産經もどうやら親石破のようである。
《自民党総裁選で訴えていた政策のいくつかに関し、軌道修正したことを歓迎する。
例えば安全保障政策だ。アジア版NATO(北大西洋条約機構)に言及しなかった。構想実現には憲法問題を解決する必要があり、足並みの揃(そろ)わない各国との交渉にも多大な政治的エネルギーを要する。台湾有事の抑止を優先すべきである》(2024年10月5日付産経主張)
主張子は分かっていない。石破氏は、9月25日付の米ハドソン研究所への寄稿文で台湾有事を抑止するためにアジア版NATOが不可欠としているのである。
《今のウクライナは明日のアジア。ロシアを中国、ウクライナを台湾に置き換えれば、アジアにNATOのような集団的自衛体制が存在しないため、相互防衛の義務がないため戦争が勃発しやすい状態にある。この状況で中国を西側同盟国が抑止するためにはアジア版NATOの創設が不可欠である》(「日本の外交政策の将来」)
石破氏が軌道修正したのは、関係各国から総スカンを食らったからである。
主張子は、
《岸田文雄前首相が語った「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との認識を、石破首相が演説で示したのも妥当だ》(産經、同)
と言うが、果たしてそうか。どうしてこれほど長い間、ロシアのウクライナ侵略は続いているのか。国連はどうしてロシアの侵略を止めないのか。ロシアが安保理常任理事国であるから、国連は機能しないと言うのであれば、国連が無用の長物と言っているに過ぎないことになる。また、NATOも本気でロシアの侵略をやめさせようとしているとは思われない。私の目には、関係各国が「戦争ビジネス」で儲けているようにしか見えないのだ。
岸田前首相は、ウクライナへの資金援助を繰り返してきた。が、そのことで戦闘終結に向けて何か前進したのか。むしろ、戦闘を続けさせ、「武器商人国家」を儲けさせているだけではないか。日本は、金銭的な余裕があるわけでもない。にもかかわらず、人道的支援を行ってきたのは、「キックバック」が発生しているからだという指摘すらあり、「モラルハザード」(倫理の欠如)を起こしている可能性もあるのだ。
《安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想を踏襲したのも正しい。防衛力の抜本的強化の熱意と具体策を今後聞きたい》(産經、同)
まさに「天下のご意見番」気取りである。〈正しい〉かどうかは主張子自身が判断することではない。
《経済では「賃上げと投資が牽引(けんいん)する成長型経済」を果たすと訴えた。総裁選で触れたものの市場が警戒する金融所得課税見直しなどは封印し、おおむね岸田路線を踏襲した。物価高を克服しつつデフレからの完全脱却を確実にする政策の継続が必要なのは明らかである》(同)
主張子は、岸田前政権の経済政策を評価しているということか。が、言っていることとは裏腹に、「実質賃金」は下がり続け、社会負担は増すばかりである。こんな悪しき社会主義的政策を評価する産經もまた、紛(まご)うかた無き「左翼紙」と言わざるを得ない。