保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

胡散臭い改憲論について(12)/14

《日本で憲法論議というとイコール第9条の問題ととらえられ、憲法改正といえばタカ派というレッテルが貼られがちです。しかし、今の日本国憲法が抱えている問題点は、決して第9条だけではありません。戦後50年以上1度も改正されていないため、環境権や知る権利など、新しい権利の概念も取り入れられていません。また使われている言葉も暖味で、文脈は悪文の代表のそれのようです。簡潔な文章でないため、文意がはっきりせず、解釈によって条文の意味がさまざまに歪められてきました》(櫻井よしこ憲法とはなにか』(小学館)、p. 9)

 戦後保守派の改憲論は、どこの国のものか分からないような、抽象的な現憲法を改め、日本の歴史伝統を踏まえた「日本の憲法」を作ろうとするのではなく、現憲法の時代に合わなくなったところを修正しようとするものである。つまり、戦後保守派の改憲論は、マッカーサーによって押し付けられた憲法を保守保全することに力点があるということだ。

 戦後保守派は、戦後体制を保守すべく、その象徴たる日本国憲法の不備を補い、戦後体制をより堅固(けんご)なものにしようとしているのである。戦後保守派は、日本の歴史伝統を忘れ、自由、平等、人権、平和といった観念の世界における綺麗事に酔い痴れてしまっているのである。

《「戦後」とは、対米敗戦によるアメリカニズム(あるいは純粋近代主義)への精神的隷属という意味での、敗戦トラウマ(精神的外傷)を嘗(な)めつづけるのに日本人がおおよそこぞって愉悦を覚えてきた55年間のことである》(西部邁ナショナリズムの仁・義』(PHP)2000年刊:前書き、pp. 1-2)

【続】