保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

朝日社説の路線変更について(2)相変わらずの他紙社説

かねてこの計画を「核汚染水で海洋環境の安全と人類の生命、健康にかかわる重大問題」と批判してきた中国は、初日の放出後、日本産水産物の全面禁輸を宣言し、25日には水産加工品の購入や使用も禁止した。

理由は「中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保するため」というが、不当な禁輸で日本の水産業に多大な経済的打撃を与える暴挙に他ならない。岸田文雄首相が即時撤廃を申し入れたのは当然だ。(8月26日付産經主張「中国の水産物禁輸 科学無視の暴挙をやめよ」)

 が、日本産水産物の全面禁輸を即時撤廃するようシナ(China)に申し入れたことは疑問だ。自由主義の立場から、各国には禁輸する自由もあると考えるからである。逆に、禁輸は認められないと言うには、そこには何某かの共通了解がなければならない。もし、国際規則に違反しているというのであれば、それを問題にすればよい。が、それをしないということは、今回の禁輸が国際規則違反に問えないということの裏返しである。

 が、だからこそ、自由貿易圏を作ろうということで「環太平洋パートナーシップ」(TPP)を作ったのではなかったか。そこには反自由貿易のシナを包囲する意味合いもあった。一方でTPPを作り、もう一方でシナに依存するというのでは、全くの「矛盾」である。

 シナが日本から水産物を買わない自由があるということであれば、当然、日本がシナに水産物を売らない自由もあるということになる。シナが反自由貿易国であるなら、シナに貿易を依存しないことだ。それでこそTPPも活きて来る。だから、禁輸をやめてくれるように頼むくらいなら、むしろ「脱シナ」に舵を切るべきだ。

 科学的な論拠に基づかない禁輸は自由貿易のルールに反する。直ちに撤回すべきだ。(8月26日付毎日社説)

 科学的根拠を無視し、日本に政治的な圧力をかけようとする狙いは明白である。中国政府は、一方的な禁輸措置を速やかに撤回すべきだ。(8月26日付読売社説)

 <撤回すべきだ>などといかにも対等な立場で物を言っているようで、実際は弱々しく「お願い」をしているだけだ。一方、朝日社説は、撤回をお願いしたりせず、<合理性を著しく欠いた措置に、強く抗議する>と言う。

 他紙社説が、綺麗事として、シナとの交易が元に戻ることを力なく望んでいるのに対し、朝日社説は、<水産物の国内消費を促進し、欧米を含む新たな販路開拓で、中国市場への依存を改めていく努力も求められる>と、「脱シナ」に踏み込んでいる。私が今回の朝日社説を評価する所以(ゆえん)である。【了】