保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

土地利用規制法成立について(2)  ~実質「基地周辺住民監視」法~

《土地を巡る安全保障上の不安や懸念としては、外国資本等による土地の取得・利用を問題視する指摘が少なくない。しかしながら、経済活動のグローバル化が進展する中、外国資本等による対内投資は、イノベーションを生み出す技術やノウハウをもたらすとともに、地域の雇用機会創出にも寄与するものであり、基本的には、我が国経済の持続的成長に資するものとして歓迎すべきである》(「国土利用の実態把握等に関する有識者会議」提言)

 驚くべきことに、この時点で外国資本による土地購入が懸念から<歓迎すべき>ことに変わってしまっている。

《今般の政策対応の目的は、安全保障の観点からの土地の不適切な利用の是正又は未然防止であり、土地の所有者の国籍のみをもって差別的な取扱いをすることは適切でない。また、専ら外国資本等のみを対象とする制度を設ければ、内国民待遇を規定した、サービス取引に関する国際ルールである GATSGeneral Agreement on Trade in Services)のルールにも抵触する。以上を踏まえ、新しい立法措置を講ずる場合には、内外無差別の原則を前提とすべきである》(同)

 安全保障の問題を考える際に、GATSを持ち出すのは不適切であり、平和呆けと言わざるを得ない。これでは外国資本による土地購入が規制されるべくもない。

《問題は、野党第一党の立民と共産党が成立を妨げようと徹底抗戦したことだ。安全保障上、極めて無責任な姿勢といえる。法律にのっとった土地の売買や利用は少しも制限されない。困るのは、スパイ行為や妨害・破壊工作の意図がある敵性国や勢力だけだ。立民が足を引っ張るようでは、建設的な安全保障論議は難しい》(6月17日付産經新聞主張)

 が、立憲民主党共産党が猛反対したのは、この法律が住民監視を目的とするものに変質してしまったことが大きいと思われる。

《野党や市民団体からは、基地反対運動などに関わる人たちの個人情報の収集や扱いに強い懸念が示されている》(6月17日付京都新聞社説)

在日米軍専用施設の7割が集中する沖縄での影響は特に大きい。普天間飛行場を市街地が取り囲む宜野湾市では、約10万人のほぼ全市民が土地の所有、利用者として調査対象となり得る》(6月17日付東京新聞社説)

 安全保障上重要な土地を外国資本が購入することを懸念し、規制を掛けようとしたのが話の始まりだったはずである。にもかかわらず、論点がずれてしまい、結果的に基地周辺住民を監視するための法律のごとくと化してしまったのは一体何故なのだろうか。

 怪しげな力が動いた、などということはないのだろうか。【了】