保守論客の独り言

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脱ハンコについて(2) ~経団連・中西会長のハンコ不要論~

経団連の中西宏明会長は27日の記者会見で、日本企業に残る押印の慣行を巡り「ハンコ(に頼る文化)はまったくナンセンスだと思う」と語った》(日本経済新聞 2020/4/27 17:15)

 ハンコを押す行為自体が<ナンセンス>なのではなく、ハンコを押す行為を<ナンセンス>にしてしまっている企業が問題なのである。経団連会長がハンコを<ナンセンス>と公言して憚(はばか)らないその鉄面皮に私は逆に恐れ入る。

《中西氏は「ハンコ屋さんには怒られるかもしれないが、私は海外生活も長かったのですべて署名でいい」と指摘。「電子署名でもいい。ハンコは美術品で構わない」とし、企業や行政のやり取りをデジタル化するよう訴えた》(同)

 押印の慣習は別にハンコ屋のためにあるのではない。また、自分が海外生活が長かったという理由で日本の慣行に変更を求めるのもどうかしている。このような人物が会長を務める経団連には大きな疑問符が付く。

《日本の経済界を代表する経団連親中派で固まっており、銀座で金を落としてもらうだけでは満足しない。9月12日、中西宏明会長率いる経団連と日中経済協会、日本商工会議所の合同訪中団は、中国の首都北京で李克強(リー・コーチアン)首相と会談。自由貿易の堅持が必要との認識で一致したという。

会談の冒頭、深々と頭を下げる日本の財界人と無表情の李首相との会見の様子は皇帝に謁見する前近代的な「朝貢使節」のようだった。それにも懲りず、10月10日にも中西会長は福田康夫元首相と北京を再訪して李首相と会談した》(楊海英「安倍訪中に経団連の利権あり」:Newsweek日本版 2018年10月25日(木)15時30分)

《コロナ危機への対応で在宅勤務の拡大・定着が急がれるが、その妨げになっているのがハンコ主義や書面主義、対面原則といった昔ながらの商慣習だ。

IT企業を中心に一連の慣行と決別し、業務のデジタル化を進めようという機運が急速に高まっている。このうねりを経済界全体に押し広げ、日本経済のデジタル化に弾みをつけたい》(5月29日付日本経済新聞社説)

 日経社説子は、長年続いてきた慣行に対し何の配慮も示さずに、ハンコや書面を止めデジタル化を進めようと前のめりである。

 <ハンコ主義>なる言い方も引っ掛かる。果たして押印の慣行は<主義>と呼ばれるようなものなのか。おそらくそこに「思想」があるわけではない。やはりそれは長年の「慣行」でしかない。

 大事なのは、この慣行を捨ててしまう前に、それにどのような意味があり、どんな利点があるのかを熟慮することである。そのことなしにハンコなんか要らないなどと軽々しく言うのは無分別の誹(そし)りを免れぬに違いない。【続】