《国と地方の長期債務(借金)の残高は20年度末に1125兆円に達する。これは国内総生産(GDP)の約2倍にあたる規模で、先進国で最悪の水準だ》(1月20日付北海道新聞社説)
などと言われてきた。にもかかわらず、日本社会は暗くはない。それはなぜか。
《そもそもの「国の借金」とは、定義的には日本の対外負債のことである。日本政府、日本の民間の集合体である「日本国家」が外国から借りているお金こそが、正しい意味における国の借金なのだ。
実は、国の借金ならぬ日本の対外負債は、2016年末速報値の数字で、何と643・7兆円もある。財務省の言う「日本の国の借金は1000兆円!」はウソなのだが、それにしても現実に640兆円を超す「国の借金」が存在しているわけだ。
ところが、我が国は何も外国からお金を借りているばかりではない。無論、外国に「貸し付けているお金」というのも存在するのである。すなわち、対外資産だ。
日本国の対外資産は998・6兆円(16年末速報値)という、とてつもない金額に達している。日本国(日本政府ではない)が外国に貸しているお金が998・6兆円。日本国が外国から借りているお金が643・7兆円。すなわち、純資産(対外純資産)が354・9兆円。
お金持ちの定義は「金融資産が多いこと」ではない。お金持ちとは「純資産が多いこと」なのだ。そして、日本の対外純資産、約355兆円は世界最大だ。
実は、日本は「国家」としてみれば借金大国どころか、世界最大のお金持ち国家なのである》(三橋貴明『日本が国際破綻しない24の理由』(経営科学出版)、pp. 17-18)
《内閣府が先週公表した最新の中長期財政試算によると、25年度の国と地方を合わせたPB(基礎的財政収支=プライマリーバランス)は3兆6千億円の赤字となる。半年前の前回試算より赤字幅が拡大し、目標達成はいっそう遠のいた。
世界経済の減速による税収の伸び悩みなどが響いたという。だが、現実離れした経済成長を前提に高い税収を見積もり、歳出を野放図に膨らませたのが実態である。
昨年10月に消費税率を引き上げたのに、財政の健全化が進まない状況は国民には納得しがたい。
政府は経済成長頼みの危うさを直視し、歳入、歳出ともに根本から見直して黒字化の明確な道筋を示すべきだ》(同)
黒字化に拘(こだわ)れば、景気を減速させることになる。昨年の消費税率を10%に上げたのもその1つである。さらに、財政出動を絞るようなことがあれば、マイナス成長に落ち込むことも有り得るだろう。【続】