保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

消費増税賛成派も反対派も根無し草(3) ~せせこましい議論よりも「大きな絵」が必要だ~

《安倍首相は増税を確約して、参院選に臨む。野党はそろって、中止や凍結を訴える。

 10%への増税は、ふくらむ社会保障費の財源とするため、民主党政権時代の7年前に法律で定められた。消費税を政争の具にしないよう、当時野党の自民党公明党も合意した。高齢社会に、政治が正面から向き合う決断をしたはずだった》(710日付朝日新聞社説)

 膨らむ社会保障費を賄う、景気に左右されない安定的財源として消費増税を行うという話の裏には、先進国最悪の借金大国日本の財政健全化という話がある。

《消費税は、高齢化社会を支える財源といわれる。そこには以下のような2つの意味が含まれる。

1は、消費税収は全額社会保障費用に使われる目的税で、消費増税は「社会保障の充実」のために行うこととなっている、ということである。

2に、わが国の社会保障費の財源を見ると、消費税収だけでは不足し、赤字国債ファイナンスされている。そこで、赤字部分を税財源に置き換えることが「社会保障の安定化」につながる、ということである。

 しかし、お金に色がついているわけではないので、この区分はあいまいである。とりわけ第2の議論は、「消費増税しても赤字の補てん(財政再建)に回るばかりで、社会保障は充実しないではないか」という国民からの批判を招いてしまう。つまり、この2つの区分を使い分ける政府の説明が、消費増税に対する国民の不信感を生んできたともいえる》(森信茂樹「消費増税は何のため?:国民の不信感招かないための議論を」:ダイヤモンドオンライン 2019.05.16

 が、現在の社会保障制度は右肩上がりの高度経済成長期に作られたものであり、高度成長が見込めなくなった今、制度の見直しは必然である。制度の見直しが放置されたまま、現在の制度を維持するために増税するというのは政治の怠慢であろうと思われる。

《首相は「今後10年間くらいは消費税を上げる必要はない」と言う。その10年間にも高齢化が進み、政府の試算では、国の予算の社会保障関係費は7兆~9兆円増える。消費税率で3%ほどだ。今後の道筋を、どう描こうとしているのか。

 野党は消費増税に代わる財源として、株の配当などへの税金や法人税増税議員定数の削減といった歳出改革を掲げる。検討に値する点もある。

 社会保障と財政を持続可能な姿にするのに、選択肢はいくつかあり得る。税制や歳出の全体を見渡し、どう改めるのか。選挙戦で議論を深めるべきだ》(同、朝日社説)

 <社会保障と財政を持続可能な姿にするのに…税制や歳出の全体を見渡し、どう改めるのか…議論を深めるべきだ>というのはその通りだろう。

 私は、その場限りで言い放しの<選挙戦>ではなく国会でしっかり議論して欲しいと思うけれども、痛みを伴うことが避けられないため、どの党も選挙を意識して本気でこの問題に取り組もうとしていないように思われる。

 日本が繁栄し続けるために何が必要なのか、そしてその先にどのような未来が描けるのか、といった「大きな絵」が描ける政治家が今必要である。【了】