保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

山本太郎・れいわ新選組代表を考える(4) ~巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)~

《消費税が廃止されれば、消費が喚起されます。内部留保を溜め込んでいた企業も投資を始めます。これにより好ましい経済状況が生まれ、これまで厳しかった中小企業の業績も回復していきます。その結果、中小企業にも貸金を上げる余裕が出てくると思います》(『月刊日本』2019年9月号、p. 47)

 実はこのような減税政策こそが本当の意味での「新自由主義」なのである。つまり、山本太郎氏は自ら気付かずして、<世界に逆行して>「新自由主義者」になろうとしているのである。

 が、この見立ては間違っている。企業が設備投資に消極的なのは、消費税の負担のせいで消費が伸び悩んでいるからではない。目指すべき目標が見えないからである。

 アベノミクスの金融緩和は、円安株高によって自動車、白物家電をはじめとする斜陽産業を生き返らせることに成功はしたが、逆に新しい産業の芽を摘んでしまった嫌いがある。

《全国一律で1500円の最低賃金が保償されるようになれば、わざわざ家賃の高い大都市に住む必要はなくなります。東京で生活する人の多くは、収入の半分近くを家賃につぎ込んでいます。地方都市でも最低賃金が保証されるなら、もっと家賃が安くて、暮らしやすい場所で暮らそうと考えます。同時に、地方から大都市への流出も止まります。逆に地方に人々が流入するようになります。衰退していた地方のシャッター街も息を吹き返します。つまり、政府補償で全国一律最低賃金1500円は本当の地方創生になるということです》(同)

 すべてが「仮に」の話で現実的ではない。そもそも最低賃金を全国一律1500円にできるわけがない。「全国一律1500円になれば」などと非現実的な世界で妄想を膨らませても意味はない。

 地方創生の鍵が最低賃金を上げることにあるかのように言うのは詐欺である。最低賃金1500円の恩恵に与(あずか)る人はどれくらいいるのか。おそらく最低賃金が低いからということだけで人が都会へと流れているわけではないだろう。地方の魅力を総合的に高めなければ地方が活性化するはずがないのである。

《外国の軍隊が自国に駐留し続け、しかもその駐留経費のほとんどを負担するような国は、世界中のどこにもありません。宗主国と植民地の関係においてしか、こうした不平等な関係は成立しません。このような恥ずべき状態がどうして変わらないのか。それは、変えようという政治的な意志が働いていないからです。

 まず、国土全体のわずか0・6%の面積しかない沖縄に、米軍基地の70%が集中している状況を変えるべきです。沖縄にいる海兵隊にはカリフォルニアにお帰りいただく。同盟国と言うならば、対等な関係を構築しなければなりません。日本の主権を侵害している日米地位協定にも踏み込むべきです。そして、米軍に依存した安全保障政策を改め、自主独立の安全保障政策も考える必要があります。そのためには、防衛にかかる費用は担保しなければならないし、こうした議論を避けるべきではないと思います》(同、p. 48)

 問題は敗戦後70年以上にわたって、米国依存が習い性となった戦後日本がそう簡単に「自主独立」など出来ないであろうということである。自主独立には、東京裁判史観の呪縛を解き、自主憲法制定の必要があろうが、それを米国や中国が許すとも思えない。自虐史観と米製憲法に縛られた自主独立など矛盾も甚だしいのである。

《― 今、山本さんは次の総選挙で与党を倒し、総理大臣を目指すと語っています。身につけるべき資質は何だと考えていますか。

山本 調整能力、清濁併せ呑む度量、意見の違う人とも手を組みながら数を増やしていく姿勢など、足りないものだらけだと思います》(同、p. 48)

 私には「巧言令色鮮し仁」(言葉巧みで、人から好かれようと愛嬌を振りまく者には、誠実な人間が少なく、人として最も大事な徳である仁の心が欠けているものだ)にしか思われない。【了】