保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

最低賃金引き上げについて(2) ~絵に描いた餅~

《日本の最低賃金は先進国の中では低水準で、個人消費低迷の原因とされてきた。経済的理由で結婚や出産をあきらめている人も多い。少子化に歯止めをかけるためにも低賃金で働いている人の待遇改善が必要だ》(81日付毎日新聞社説)

 が、会社に余裕がなければ、最低賃金は上げられない。労働者だけの観点だけで意見しても意味がない。また、経済的理由が少子化に影響しているのだとしても、それはただ最低賃金だけの問題ではない。正規・非正規の雇用形態の問題もある。

 否、もっと大きな視点で言えば、人件費を抑えることで利益を生み出そうとする従来型の経営法を改める必要がある。言い換えれば、単純労働から付加価値生産労働へと労働の質を切り替え、生産性を高めることで賃金を上昇させる形に変えていかなければならないということである。

最低賃金は学生アルバイトや外国人労働者など、すべての労働者に適用される。地域間格差が現状のままでは外国人労働者は賃金水準の高い都市部へ集中するだろう。受け入れ拡大策の効果が人手不足の深刻な地方に及ぶようにするには、地方の最低賃金を一層引き上げるべきだ》(同)

 このように指摘する論者は多い。が、果たしてそう言い切れるだろうか。都市部と地方では生活費が異なる。住居費ひとつとっても相当な開きがある。食費の違いも馬鹿にならない。だからもう少し慎重で丁寧な議論が必要だろう。

《中小企業には強い反対論もある。低賃金の非正規労働者を雇用することで経営が維持できている会社もあり、人件費の上昇が経営を圧迫して従業員のリストラや倒産が続出することへの懸念からである。

 従業員数では全体の約7割を占める中小企業だ。政府には商品やサービスの付加価値を高め、収益力アップにつなげるための支援策が求められる。大企業から不利な取引条件を強いられている下請け企業も多い。適正な取引慣行へ改めるよう大企業も協力すべきである》(同)

 こういった話は私には「絵に描いた餅」のようにしか思えない。国が支援するといってもどのような支援をするというのか。<商品やサービスの付加価値>を高めるなどと言うのは簡単であるが、そのようなことが簡単に出来るのなら苦労はない。

 また、大企業も、かつて松下幸之助氏が社員は家族だと言ったような時代とは異なり、株主を意識して経営しなければならないのであるから、<適正な取引慣行へ改める>などというのも言うほど簡単なことではないのである。【続】