保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

米国のINF条約破棄について(1) ~判を押したような日本のマスコミの反応~

《トランプ米政権がロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約について破棄通告を発表した。通告後、6カ月で失効する。

 これを受け、ロシアのプーチン大統領も同条約の義務履行を停止すると表明した》(2月4日付京都新聞社説)

 米国の条約破棄のみを否定的に捉えている新聞もある。

《世界の核競争を加速させる無分別な過ち》(2月3日付朝日新聞

《世界では軍備を増強する動きが広がっている。条約破棄を軍拡競争のきっかけにしてはならない》(2月2日付日本経済新聞

《不毛な核軍拡競争に歯止めがかからなくなることを恐れる》(2月3日付北海道新聞

 一方、米国の条約破棄のみならずロシアの対応をも含めて否定的に見ている新聞もある。

《歯止めのない軍拡競争が起きかねない》(2月5日付東京新聞

《新たな軍拡競争の恐れが高まっている》(2月4日付京都新聞

《失効すると、冷戦時代と同様、核開発競争を招く恐れが強まる》(2月5日付神戸新聞

 親露的かどうかは一旦措くが、いずれにしても、このように判を押したように綺麗事が並ぶことに私は「げんなり」してしまう。が、産經新聞だけはまったく違った見解を示している。

《「核兵器なき世界」に逆行するとして批判することはたやすいが、皮相的にすぎる。

 破棄は、米国がロシアと中国の核軍拡を傍観してきた姿勢を改め、綻(ほころ)んだ核抑止態勢を再構築するための措置だ。米国および日本を含む同盟国の諸国民を守る対応といえる》(2月3日付産經新聞主張)

 日頃左寄りのマスコミは「多様性」を強調するのに、こと軍事ないしは平和の問題となると一元化してしまう。否、事あるごとに「多様性」を主張すること自体が一元的と言うべきである。

 私は必ずしも産經の見方が当たっていると言いたいのではない。が、産經の主張は唯一違った角度から物事を見ており、別の視点を提供してくれているという点で貴重だと思う。

 一方、他の新聞は、中学生でも言いそうな在り来りの取るに足りない反応でしかない。米露が条約に縛られるなか、中国は自由に核軍拡を進めているということであれば、一旦条約は破棄して新たな枠組みを探らざるを得ないというのは当然の話でしかない。

《米ロ両首脳は、核競争に陥る不毛さを認めあった条約締結当時を思い起こすべきだろう。米ロ中を含め、どの国民も望んでいるのは経済的繁栄と社会の安定であり、無用な軍拡による国力の浪費ではない》(同、朝日新聞

 私はこのような牧歌的議論には与しない。おそらく米国も露国も中国も、経済的繁栄は「軍事力」あってこそのものと思っているに違いない。社会は弱肉強食でしかないと考えているからこそ、軍事的鍔迫(つばぜ)り合いを行っているのである。【続】