西部邁氏は言う。
《(憲法)21条の言論の自由というのは間違っていると思っている。人間の卑猥な好奇心とか、人間を傷つけたいという攻撃精神とかいうものを言論は含みうるわけですからね。そう簡単に言論の自由は野放しですよとはいかないと思っている。
(中略)
言論の自由は公共の福祉に反したら統制されてしかるべしというのが一般論でなければならない。しかし、それが現実にどの程度、反しているかということは、その問題に即してちゃんとした議論をやってみないといけない》(小林よしのり・西部邁『本日の雑談2』(飛鳥新社)、p. 51)
が、民主党政権を<悪夢のよう>と称するのは「悪口」の類(たぐい)であって、「言論の自由」を持ち出すような大層なものではない。ましてそれが<公共の福祉>に反するかを巡って国会で議論するような話でもない。
大かた人は、言(コトバ)と事(ワザ)と心(ココロ)と、そのさま大抵相かなひて、似たる物にて、たとへば心のかしこき人は、いふ言のさまも、なす事(ワザ)のさまも、それに応じてかしこく、心のつたなき人は、いふ言のさまも、なすわざのさまも、それに応じてつたなきもの也(本居宣長『うひ山ぶみ』)
【口語訳】大方の人は、言葉と行いと心の様が大抵適合し似ているものであって、例えば、心の優れた人は、口にする言葉の様も、行いの様も、相応に立派であるが、心が貧しい人は、口にする言葉の様も、行いの様も、相応に拙(つたな)いものである
安倍首相がどう言おうと自由論としては構わないのだけれども、道徳論としては、死者に鞭打つかのような発言は慎むべきではないかというのが私の意見である。
この論争は子供の喧嘩へと発展する。
安倍 みなさん、悪夢でなかった、それを否定しろとおっしゃるが、ではなぜ民主党という名前を変えたんですか。私は非常に不思議だ。自民党という名前を変えようとは思わなかった。私たち自身が反省して生まれ変わらなければならないという大きな決意をしたんです。名前のせいで負けたわけではない。みなさんは民主党というイメージが悪いからおそらく名前を変えたんだろうと推測する人がたくさんいますよ。そういう意味では皆さんもそう思っておられるのではないですか。
岡田 驚きました。もちろん私たちは政権運営について反省はあると今申し上げました。しかしその前の自民党政権時代の反省はないのかと私は申し上げている。その重荷を背負って私たちは運営をした部分もある。あなたが本当に自民党政権時代の反省をしたというのであれば、あんな言葉出てこないはずですよ。一方的に民主党政権にレッテル張りしていますが、あなたたちがやったことで私たちも苦しんだこともある。そういったことについて謙虚な気持ちで、総理ですから発言してもらいたい。今の発言全く了解できませんよ。取り消しなさい!
安倍 取り消しなさいと言われても取り消しません。(FNN PRIME 2019年2月13日 水曜 午前6:30)
これが国権の最高機関における議論であるから悲しくなる。【了】