保守論客の独り言

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日本固有の領土と言えなくなった北方領土(1) ~1月31日衆院本会議 野田前首相 vs. 安倍首相~

《毎年2月7日には、北方領土の返還を求める全国大会が催される。今年は、重大な変化が起きた。同大会を主催する官民団体が採択する大会アピールから、なんと「北方四島が不法に占拠されている」という事実を述べた文章が削除されたのである。同大会で最重要の安倍首相のスピーチからも「日本固有の領土」という言葉が消えた》(木村汎「首相は正気か、北方四島『固有の領土』となぜ言えないのか」:iRONNA 2019/02/07)

 こうなることは予想された。先月31日の本会議でも、「北方領土は我が国の固有の領土であるが、現時点ではロシアによる不法占拠が続いているという法的立場に変わりはありませんね」と尋ねた野田佳彦前首相に対し、安倍晋三首相は「固有の領土」や「不法占拠」という言葉を避けた。

野田  総理は昨年11月の日露首脳会談後、平和条約の締結後に歯舞・色丹の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を今後の交渉の基本とすると明言しました。これは歴代政権が粘り強く交渉してやっと勝ち得た北方四島を明記して帰属の交渉を継続するとした1993年の東京宣言から後退したスタンスです。総理、なぜ四島返還からわざわざ二島返還へと軸足を移したのですか。明確にご説明ください。

 歯舞・色丹の二島先行返還なら理解できますが、二島で最終決着という可能性もあります。全面積の7%の返還で妥協し、残り93%を断念すれば、先人の苦労がすべて無駄になります。総理は過去の交渉を振り返り、昨年11月26日の衆議院予算委員会で、70年間まったく変わらなかったと言い切りました。1ミリも動かなかったと表現したこともあります。歴代政権の粘り強い努力に対して、敬意を欠いているのではないでしょうか。ご説明ください。

 日本側が二島返還へと大きく舵を切っても、ロシア側に変化の兆しは見られません。交渉責任者であるラブロフ外相は、第2次大戦の結果、ロシア領になったと相変わらず我が国が到底受け入れることのできない歴史観を主張しています。一方、河野外相は国会審議においても記者会見においても日本側の交渉に臨む基本的な立場を明確にしていません。この彼我の差を見ると、二島返還どころか石ころ一つ還ってこないかもしれません。

 ラブロフ外相については、北方領土という呼称も使うなと言ってるそうなので、あえて総理にお尋ね致します。北方領土は我が国の固有の領土であるが、現時点ではロシアによる不法占拠が続いているという法的立場に変わりはありませんね。昨日は小さな声でゴソゴソ言っていましたのでわかりませんでした。不法に占拠し続けていれば、いつか日本は諦めるという誤ったメッセージを周辺国に与え、竹島問題で韓国にエールを送りかねませんので、明確な答弁を求めます。

安倍  北方領土は我が国が主権を有する島々です。この立場には変わりはありません。日露間ではこれまで1993年の東京宣言をはじめ多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これらの諸文書や諸合意を踏まえた交渉を行ってきています。その中でも1956年の日ソ共同宣言は両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有してます。

 1956年の共同宣言の第9項は平和条約交渉が継続されること、および平和条約締結後に歯舞群島色丹島が日本に引き渡されることを規定しています。従来から政府が説明してきている通り、日本側はここにいう平和条約交渉の対象は、四島の帰属の問題であるとの一貫した立場です。その上で交渉内容に関わることや、我が国の交渉方針、考え方については交渉に悪影響を与えないためにもお答えすることは差し控えさせていただきます。

 いずれにせよ、政府として領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉してまいります。

 逃げ腰の安倍首相が完全に押されてしまっている感がある。相手が野田前首相であるのだからさもありなんとはいえ、野党にはこれにならって、森友・加計問題のような難癖付けから政策論議へと転換を図ってほしいものである。【続】