保守論客の独り言

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日露首脳交渉について ~takeなきgive~

安倍晋三首相とプーチン大統領は、モスクワで25回目の首脳会談を開いた。が、北方領土返還に関する具体的進展は見られなかった。一方、

《今後数年間で日露間の貿易額を現在の1・5倍の、少なくとも300億ドルへ引き上げることや、北方四島での共同経済活動の早期実現へ作業を進める点では一致した》(1月24日付産經新聞主張)

 日本が持つ唯一と言って良い経済支援カードを先に切ってしまっては、北方領土返還交渉が進むはずがない。外交下手というのも恥ずかしいほどの愚策である。ロシアとの関係が深まれば、交渉が進むと考えているとすれば大間違いである。

 交渉とは本来 give-and-takeの同時進行でなければならない。「損して得取れ」とは日本人的発想であって、ロシアとの交渉で先に損をすれば、それまでである。取り敢えずgiveだけ切り離して先行させ、後からtakeを期待するようなやり方は国際的には通用しない。

 案の定、ロシアは強気になってしまった。

《14日の外相会談はロシアの強硬姿勢を際立たせた。ラブロフ外相は四島が「第二次大戦の結果としてロシア領になった」と詭弁(きべん)を弄し、四島への「ロシアの主権」を認めなければ交渉は進まないと語った。「北方領土」の用語は「受け入れられない」とも述べた》(同)

 ロシアは当初、北方領土のうち、歯舞、色丹の2島返還をちらつかせて経済支援を得ようとしたのであろうが、先に経済支援の約束を取り付けたので、2島返還すらも取り下げてしまった。

《択捉、国後、色丹、歯舞の四島は日本固有の領土だ。日ソ中立条約を一方的に破ったソ連が不法占拠した。ロシアは四島を日本に返還しなければならない。

 日本はこの法と正義に基づく立場を変えてはならない。これなしに経済協力を先行させては、ロシア側の思惑にはまるだけだ》(同)

 が、おそらくこう言っているだけでは永遠に北方領土は還ってこないだろう。否、残念ながら、今の日本の交渉力では取り返せないと考えるのが妥当である。

 が、取り返せないだろうからと言って交渉を断ち切れと言うのではない。領土問題が存在するということだけはしっかりとロシアにも、そして国際世論にも訴え続ける必要はある。

《安倍政権は「四島返還」や「北方領土返還」を正面から語っていない。北方領土の7%にすぎない色丹、歯舞の「2島返還」ばかりが日本側で論じられている。

 だが、領土とは、主権と国益の根幹にかかわる。現在の世代が安易な理由で放棄していいものでは決してない》(同)

 力で奪われたものは、力で奪い返すしかない。が、日本国憲法は大々的に平和主義を謳っている。であるなら、北方領土は日本固有の領土だと、これまで通り、変に期待もせず、平和に訴え続けていくしかない。そういうことなのではないか。