保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

野党に巣食う「ナショナリズム的なるもの」(2) ~ご都合主義的「反対論」~

《私が使っている広い意味でのナショナリズムには、共産主義、政治的カトリシズム、シオニズム反ユダヤ主義トロツキズム、平和主義、といったような運動や傾向も含まれる。それは必ずしも政府や国家に対する忠誠を意味せず、ましてや自分の国に対する忠誠を意味するものではない。またその対象となる単位が現実に存在することさえ、必ずしも必要ではない》(ジョージ・オーウェルナショナリズム覚書」:『オーウェル評論集2 水晶の精神』(平凡社)、p. 37)

 このオーウェルが言う広義の「ナショナリズム」に野党の気質も当てはまる。議論を通してより良い結論を導こうというのではなく、ただ政府与党が間違っているということを針小棒大に言い募り、自分たちの正当性を訴える。

ナショナリズムとは自己欺瞞を伴った権力欲といえる。すべてのナショナリストはまぎれもない歪曲もあえて辞さないが、それでいて ―何か自分よりも大きな存在に殉じているという意識があるので― 自分が正しいと信じて疑わない》(同、p. 38)

 出入国管理法における審議においても、本来は「移民」受け入れを歓迎する考えを持ちながら安倍政権には反対するという、ご都合主義的「反対論」にはうんざりする。

《すべてのナショナリストは、一連の相似た事実の間にも類似を見ないという能力を持っている。イギリスの保守党員は、ヨーロッパにおける民族自決には賛成し、インドのそれには反対しながら、しかもそこになんらの矛盾も感じない。行為はそれ自体の価値によってではなく、だれがやるかによって善悪が決められ、いかなる暴虐行為 ―拷問、人質の利用、強制労働、集団強制移住、裁判抜きの投獄、文書偽造、暗殺、非戦闘員の爆撃― も「味方」がやったとなるとその道徳的意味合いが変わってくる》(同、p. 49)

 安倍首相の改憲姿勢を野党は批判するが、野党第1党の立憲民主党枝野幸男代表は、安倍首相が目指す憲法への自衛隊の明記以上の9条改正案を月刊誌に寄稿したことがある。これでは権力争いのために護憲を装っているだけだと思われても仕方がない。

ナショナリストはたえず権力や勝利や敗北や復讐を考えているくせに、しばしば、現実の世界で起こっていることにある程度無関心になる。彼が望むのは自分の陣営が相手を打ち負かしていると感じることであって、そのためには、自分の主張が事実に合っているかどうかを調べるよりも、敵をへこます方が近道なのである。ナショナリストの論争というやつはすべて討論クラブの水準を出ない。いつも結論が出ないというのは、どの論者もきまって自分が勝ったと信じているからである》(同、p. 53)

 森友学園加計学園問題はその最たるものであった。【了】