保守論客の独り言

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国連を利用する狡猾な中国(3) ~国連忌避ではいられない~

《特許や商標など知的財産の保護と利用促進をはかる国連の専門機関、世界知的所有権機関(WIPO、本部ジュネーブ)の次期事務局長を決める選挙が4日に行われ、米国などが推すシンガポール特許庁長官のダレン・タン氏が、中国出身の王彬穎WIPO事務次長を決選投票で破って勝利した。

選挙前は王氏のリードが伝えられていたが、「(中国人トップ就任は)銀行強盗が頭取になるようなもの」(米メディア)など中国の知的財産侵害を批判する米国が欧州各国などとともに反対キャンペーンを展開、中国人トップ就任を阻止した》(産経ニュース2020.3.6 12:08)

 中国の人間が世界知的所有権機関の長になれば、知的財産権を恣(ほしいまま)にしてしまうのではないかとの懸念がどうしても拭えない。

 米ワシントンポスト紙のジョシュ・ロギン氏は、1月31日付のコラム記事で、

This is worse than letting the fox into the henhouse. This is akin to choosing a bank robber to be president of the bank.

(これはニワトリ小屋にキツネを放つよりもっと悪い。これは銀行強盗を銀行の頭取に選ぶようなものだ)

とまで批判している。

《15ある国連の専門機関のうち、現在4つで中国出身者がトップを務めている。出身者以外でも、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は中国から多額の資金を受けるエチオピアの出身で、就任以降、台湾を締め出し、新型コロナウイルスとの戦いでは、中国寄りの発言を続けている。

 一昨年には、国際刑事警察機構(ICPO)の中国出身の総裁が帰国中に失踪した。中国政府はICPOの求める照会の要請に応えず、後に身柄の拘束が明らかになり今年1月、収賄罪で有罪判決を受けた。国内事情が優先され、国際社会の常識は通用しない。

 トップ人事を牛耳り、自国の有利を図る一方で、南シナ海の中国の領有権を否定したハーグの仲裁裁判所の判決は無視する。こうした専横を許してはならない。WIPO事務局長選は、今後の格好の先例となるはずだ》(3月12日付産經新聞主張)

 敵国条項が削除されない限り、日本にとってUN中心主義のような考え方は有り得ない。米国も言うことを聞かないUNに飽き飽きしている節がある。が、米国や日本がUNと距離を置くことは中国を利するだけである。

 パクスアメリカーナ(米国による平和)からパクスシニカ(中国による平和)へ覇権が移行すればどうなるか。「平和」という言葉は同じでも一党独裁全体主義の「平和」がいかに悲惨か言うまでもあるまい。

 中国より漏れ伝わるような弾圧が全世界を覆うなどというおぞましい事態は何としても阻止しなければならないのである。【了】