保守論客の独り言

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「元徴用工」問題を語る平野啓一郎氏への疑問(2) ~歪められた歴史を正すのが先だ~

《判決文によると、大法院が上告を棄却し、新日鉄住金に賠償を命じた理由は二つ。一つは、日韓請求権協定に、損害賠償請求権は含まれないという解釈。根拠は「韓国併合」自体の不法性にあり、「補償」が適法行為に起因する損失填補(てんぽ)であるのに対し、「賠償」は不法行為による損害填補と区別していた、との補充意見も示した。これに対し、日本政府は「韓国併合」は合法であり、賠償請求権も請求権協定に含まれる、という立場を採っている》(西日本新聞2019/9/30 11:00

 「韓国併合」が不法だというのは韓国側の一方的主張である。日本が国際法を破り、不法に韓国のインフラを整備し、不法に学校を建て、不法にハングルを普及し、不法にコメの生産量を増やし、不法に人口を倍増させた、と韓国は主張したいのか。

《請求権協定は、個人の請求権を消滅させない、という考え方で、この点では、従来の日本政府、最高裁判所も一致していた。実は、大法院でも、二名の裁判官が、請求権協定に賠償請求権が含まれる、と反対意見を述べており、そのうち一名は、個人の請求権も消滅した、としている。私は、日韓併合の経緯から合法との主張に与(くみ)できないが、この二名の見解には一定の説得力を感じた》(同)

 平野氏は、日韓併合は非合法的だと思っているということである。どうして非合法と思っているのだろうか。おそらくそこが認識の相違の根本だと思われる。

《別の補充意見の「条約が国家ではなく個人の権利を一方的に破棄するような重大な不利益を与える場合には約定の意味を厳密に解釈しなければならない」という判断に納得した》(同)

 だから個人の権利云々は韓国国内で処理してくれというのが日韓請求権協定なのである。どうして韓国併合が不法という韓国の主張に理があるのかを言わずに、このように<納得>されても困る。

《請求権協定第3条には、「両国はこの協定の解釈及び実施に関する紛争は外交で解決し、解決しない場合は仲裁委員会の決定に服する」とある。そうすべきであり、韓国側が仲裁委員会の設置に応じない点は疑問である。一方で、「約束を守らない国」などと非難し、経済制裁で圧力をかけ、外相が相手国の大臣を面罵(めんば)するなどというのは、極めて不適切である。ナショナリズムを扇動すれば、外交的な選択肢は狭まるばかりである》(同)

 韓国側が仲裁委員会の設置に応じないのは、都合が悪いからであろう。

 また、日本は経済制裁などしていない。優遇措置を取り消すことがどうして<制裁>などと呼べようか。その理由も、北朝鮮などへの戦略物資の横流しが疑われたせいであり、本来はもっと厳しく対処すべき事案である。

 河野太郎外相(当時)が面罵したのは大臣ではなく駐日大使の誤りだが、期限までに仲裁委員会開催の手続きに韓国側が応じなかったため河野大臣が大使を呼び出した際、大使は日本側がすでに拒否した「日韓双方の企業が賠償相当額を支払う」という韓国側の案について改めて言及したからである。仲裁委員会開催という真っ当な要求を無視し、一方的な主張を続けるのは外交儀礼上有り得ないことである。

《まず考えるべきは、植民地支配によって人権を蹂躙(じゅうりん)され救済の網からも零(こぼ)れ落ちてしまった被害者の存在だ。日本として出来ることは何か? その積極的関与こそが、真の意味の隣国との「未来志向」の関係ではないのか》(同)

 平野氏はあまりにも不勉強である。<植民地支配によって人権を蹂躙>されたなど「妄想」である。日本が朝鮮を併合し、いかに朝鮮を立て直そうとしたかが、おそらくは戦後日本における情報戦の影響で、見えなくなっている。否、見えないどころか<人権が蹂躙>されたなどとの韓国側の一方的な主張があたかも真実であるかのように流布されてしまっている。

 例えば、石橋湛山が朝鮮経営は利益にならないとして「小日本」を唱えたことでも明らかなのは、日本は朝鮮を搾取するどころか身銭を切って朝鮮を立て直そうとしたのである。

 「併合」を「植民地化」と見做すような歪められた歴史を改めなければ、真の関係改善は望めない。【了】