立憲民主党の枝野幸男代表が、群馬県高崎市での街頭演説で、安倍晋三首相について次のように述べたという。
《相も変わらず光の部分を一生懸命お話しになる。たしかに株価は2倍に上がり、大企業のもうけは過去最高になった。大変結構なことだ。ただ、光だけ見るのが政治でしょうか。むしろ影の部分をちゃんと見なきゃいけないんじゃないか》(7月7日付朝日新聞デジタル)
たしかに「結構」だと思っている人が非常に多いのだろう。が、それは余りにも近視眼的であり、日本国内しか見えていない大海を知らぬ「井の中の蛙」でしかない。
株価が2倍になったのは金融緩和のお陰である。が、同時に円安となり国富が縮小してしまったという影の部分がある。このことに気付いていない人が多過ぎる。
《2012年、日本のGDPは473兆7843億円である。このとき円は1ドル70円台だったので、ドルに換算すると約5兆9000億ドルになる。じつは、このドルで見たGDPは、過去の最高額である。日本のGDPは6兆ドルを超えたことはない。それが、この年は5兆9000億ドルに達したのである。
ところが、円が年末に1ドル120円になった2014年は、円では約489兆円だが、ドルでは約4兆6000億ドルである。なんとアベノミクスは、日本のGDPを約1兆ドルも吹き飛ばしてしまった》(山田順『円安亡国』(文春新書)、p. 122)
井の中の蛙の好景気、これが「アベノミクス」なるものの正体である。
続けて枝野氏は言う。
《元号が代わって初めての国政選挙だ。みなさんの暮らしが変わるわけじゃないが、こういう節目の時期には、過去を振り返っても、改めるべきは改める。みなさんそうしてきた。内閣制度ができてから4度目の改元だ。明治から大正、大正から昭和、昭和から平成。全部元号が変わったら、半年以内に総理大臣が代わっている。みなさん、歴史と伝統は大事にしませんか。3度あることは4度ある》(同、朝日新聞デジタル)
カルト教団の教祖にでもなったつもりなのか。<元号が変わったら、半年以内に総理大臣が代わっている>。それは科学的な話でもなんでもない。たまたまそうなったというだけの話である。それをあたかもまた起こるのが必然であるかのように言う。よほど枝野氏は打つ手がなく追い詰められているのであろう。
日頃、歴史伝統を蔑(ないがし)ろにしている人間が、こんな時だけ歴史伝統に、否、歴史伝統という言葉に縋(すが)ろうとするのは滑稽である、というかみっともない。
自分が安倍氏に取って代わろうという意思があるわけでもなければ気概もない。単なる評論家よろしく無責任にこのようなカルト教を唱えていただかなくとも結構である。ああ情けなや。