《日本政治の大きな転換点だ。衆院選で自民、公明の連立与党が15年ぶりの過半数割れに追い込まれ、「自民1強」の時代が終わりを迎えた。示された民意を踏まえて改革を進めることが急務である》(2024年10月29日付毎日新聞社説)
自民党に代わる新たな勢力が出て来たのならまだしも、ただ自民党が自滅しただけであるのだから、「そして誰もいなくなった」というのが本当のところであろう。勿論、新たな指導者が出てくる可能性はある。が、それは可能性だけであって、今の日本を立て直せるほどのカリスマがいるとも思えない。
勿論、1人で引っ張らなくとも、組織的に運営してもいいのだけれど、自民党がこの体(てい)たらくでは、それも難しいだろう。言うまでもなく、文句しか言って来なかった立憲民主党に建設的な意見を期待するのも無理な話である。
《衆院選の結果、自民は公示前の議席から65減の191まで落ち込んだ。現職閣僚2人に加えて閣僚経験者らも多く落選し、派閥裏金問題に関与した候補者も半数以上が議席を失った。「政治とカネ」の問題に対する国民の強い批判の表れだ》(同)
だから駄目なのだ。「政治とカネ」は大事な争点であっても、それ以外の争点がなかったことが、今回の総選挙が盛り上がらなかった最大の原因だと思われる。一番の問題は、今の国政が、争点を競い合うような体制になっていないことだ。石破陣営と高市陣営であれば、競い合うだけの政策の違いもあろうが、石破自民と野党では競い合うような違いはない。つまり、自民党が石破首相で一枚岩となるのであれば、どの政党も競い合うようなものが無いということだ。
《最優先で取り組まなければならないのは、抜本的な政治資金改革である》(同)
優先すべきは、他国に比して日本だけがGDPが伸び悩み、ここ数十年実質賃金が目減りしてしまっている経済問題であり、緊迫の度を高めている台湾有事をはじめとする安全保障問題であり、電気料金の高騰が見込まれるエネルギー問題であり、どういうわけか品不足で高騰を続ける米をはじめとする農業問題、食糧自給問題などなどであろう。どう考えても政治資金改革の優先順位は低い。
政治資金改革と言うのなら、先にお金の掛からない形に選挙制度を改革すべきである。そうすれば、裏金を作る必要がなくなり、政治資金パーティーなどという抜け穴も禁止できる。とにかく、悪名高い「小選挙区比例代表並立制」を改め、かつてのような中選挙区制に戻すべきだ。小選挙区制は、自民党か立民党かといった政党を選ぶ選挙とならざるを得ない。言い換えれば、候補者の資質が問われるわけではないということだ。このことが、候補者を甘やかしてしまうのだ。候補者は、勝手なことが言えないので、党の方針をただ繰り返すだけにならざるを得ない。党としての公約はあるが、候補者自体の公約はない。だから責任感ある政治家が育たないのだ。