保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

自民党総裁選:読売社説(2) ~公正さを欠く社説~

河野氏は将来、太陽光発電などの再生可能エネルギーで日本の全電力を賄うことは「絵空事ではない」と主張した。原子力発電所については、耐用年数となったものは廃炉とし、「いずれゼロになる」との考えを示している。

 しかし、再生エネは天候などに発電量が左右される。不足分を補う原発や火力発電などの安定的な電源か蓄電池が不可欠だが、電力需給を調整できる大規模蓄電池は開発途上だ。裏付けなく再生エネ100%を掲げるのは危うい》(9月22日付読売新聞社説)

 危ういというよりも、このような非現実的妄想を平然と言ってのけるのは「異常」だ。蓄電池云々という社説子は、今は不可能でも将来的には技術革新によって可能となるかもしれないとでも思っているのだろうか。<裏付け>なくこのようなことを言うのが危ういのではない。こんな非現実的なことを総裁選のような公の場で口にするのは只の「サイコパス」だ。

《岸田氏と高市氏は原子力の技術維持を訴え、次世代の原発である「小型モジュール炉」の開発を唱えている》(同)

 私はこの「小型モジュール炉」の開発導入は必須であると思っている。核廃棄物処理廃炉といった問題は核技術の高度化をおいて他に解決法はない。また、「核クラブ」(米英仏露中)に加わっていない日本が最先端の核技術を保有することは世界平和にとっても非常に重要なことだろうとも思う。

《外交・安全保障では、中国とどう向き合うかが焦点だ。河野、岸田両氏は、首脳会談を含め、対話を進める考えを示した。

 北朝鮮は今月、ミサイルを相次いで発射した。菅内閣は、ミサイル攻撃への反撃に関する新方針の策定を先送りしており、抑止力の強化が課題となっている。

 岸田氏は、新方針を検討する意向を示した。河野氏は「抑止力を日米同盟の中で高めていく」と述べるにとどめた。

 周辺国は、日本の政治空白を見越したかのように、緊張をもたらすような行動に出ている。各候補から具体的な見解が明らかにならなかったのは残念だ》(9月19日付読売新聞社説)

 が、産經新聞の記事からは随分違った印象を受ける。そもそも高市、野田両女史の発言を読売社説子が無視しているのも気になるところである。

高市早苗:「台湾有事の可能性は高い。日本は実効的な抑止と対処に必要な能力を保有し、日米同盟で補完するべきだ」

野田聖子:「非戦を誓ってきた平和主義の中で自分たちの取り組みを見せられる最大の機会を得ている」

河野太郎:「(台湾への)上陸侵攻が起こる可能性は否定できない。何かを起させないという国際社会の強い意志を中国に見せていく必要がある」「中国とは経済的交流も人的交流もある。したたかな外交を繰り広げていかなくてはならない」

岸田文雄:「台湾有事については平和に解決するべく関係国が努力をする。起こった場合には、国民の命を守るために平和安全法制に従ってしっかり対応していく」(産経ニュース2021/9/18 16:55

 焦点となるのは2つ。1つは防衛力強化の問題、もう1つは集団的自衛権の問題である。軍拡を続けるシナに対抗するためには、防衛力の強化はもう待ったなしである。「力の均衡」(balance of  power)を保つことがシナの版図(はんと)拡大を防ぐ最善の方策である。

 また、台湾有事、朝鮮半島有事が発生した場合、現行法では日本は何の手出しも出来ない状態にある。が、ただ拱手傍観して済まされるはずがない。米軍は何らかの行動に出るだろう。その際、集団的自衛権の行使にどこまで踏み切るのかは今のうちから考えておかねばならない。

 勿論、戦略・戦術問題を開けっ広げに議論することがどこまで許されるのかという問題もあろう。が、平和世論に阿(おもね)って、問題の核心に踏み込めないという覚悟の問題と、シナとの関係性を壊したくないという気持の問題が入り混じったもどかしさがここにあるということではないか。【了】

自民党総裁選:読売社説(1) ~批判するのが偉いのか~

《安倍前内閣の経済政策「アベノミクス」のどこを引き継ぎ、どこを変えるかが争点の一つだ》(9月22日付読売新聞社説)

 気になるのは、社説子自体が「アベノミクス」をどのように評価しているのかが見えないことである。「アベノミクス」は看板としては「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の3本の矢ということになっているが、実質は金融緩和しか機能していない。これを「アベノミクス」と固有名詞化して呼ぶことは甚だ疑問である。

 株価、有効求人倍率、失業率といった数字は改善されたとしても、3本の内2本の矢は機能しなかったのであるから、「アベノミクス」は上手く行かなかったと考えるのが妥当であろう。「アベノミクス」を総括し、新たな経済政策を考えるのならまだしも、「アベノミクス」を基準にして経済政策を考えるようでは二の舞を演じることになるのではないかと懸念される。

河野太郎行政・規制改革相は、アベノミクスでは働き手の給与が伸びなかったと指摘し、賃金を引き上げた企業への減税制度を拡充させる考えを強調した》(同)

 働き手の給与が伸びなかったのは「アベノミクス」の直接的問題ではない。働き手の給与が伸びないのは、経済構造が低賃金によって利潤を出す方式になっているからである。金融緩和によって円安となり、他国と低賃金労働競争となった。私は、円高のまま付加価値の高い経済構造への転換を図るべきだという立場であったが、「アベノミクス」によって旧態依然たる構造から抜け出せなくなってしまった。そのことが働き手の給与が上がらない根本的な原因だと思われる。

岸田文雄・前政調会長も路線の修正を打ち出し、市場での競争を重視する新自由主義からの転換を掲げた。所得再分配で格差を是正するとし、看護師や保育士らの賃金アップなどを図る意向だ》(同)

 果たして安倍政権は<新自由主義>だったのか。<新自由主義>だったのなら、どうして「一億総活躍社会」だの「働き方改革」だのといった社会主義的政策を推し進めようとしたのか。が、岸田氏のように所得の再分配によって格差を是正するなどと言えば、それこそ「社会主義」ということになる。

高市早苗・前総務相アベノミクスを加速させ、先端技術への投資を強化するという》(同)

 高市女史は、本当に<アベノミクスを加速させ>ると言っているのだろうか。だったら独自の経済政策「サナエノミクス」は不要であろう。「アベノミクス」は基礎的財政収支primary balance)に拘(こだわ)ったため十分な財政政策がとれなかった。だから、インフレ率が2%になるまでは財政再建は凍結し、積極的投資を行うというのが高市女史の経済政策の肝(きも)である。また、<先端技術への投資を強化する>というのも誤りで、危機管理に特化した投資と言っている。

《どの候補の主張も、その効果や実現性に疑問符の付くものや、具体的に何をすべきかという方法論に欠ける内容が多い》(同)

 他の候補はそうなのかもしれないが、高市女史の主張は実に具体的である。高市女史を貶(おとし)めたいからこのように書くのかもしれないが、公正さを欠くと言わざるを得ない。

 否、このように書く社説子は、どれだけの「観察眼」を自分がお持ちだと思っておられるのだろうか。批判に値する見識を自ら示すのが最低の礼儀であり、それでこその「社説」ではないのだろうか。【続】

自民党総裁選:「『負の遺産』にけじめを」という朝日社説(2) ~真相究明よりも政権批判~

《公文書の改ざんという前代未聞の不祥事であるにもかかわらず、真相解明が不十分で、政治家は誰も責任をとらなかった森友問題への対応は試金石といえる》(9月18日付朝日新聞社説)

 おそらく「安倍晋三前首相が指示して公文書を書き換えさせた」という話にならない限り、<真相解明が不十分>だと言い続けるのであろう。悪質な扇動屋である。<試金石>というのも、真実を追求する姿勢があるかどうかということではなく、自分たちと同じ「反日」の側に付くかどうかを見極めるという話なのだろうと推察される。

《きのうの共同会見では、野田氏が再調査を認める一方、河野氏は否定、岸田氏は後ろ向き。高市氏は裁判中を理由にコメントを避けた。

 4氏とも安倍、菅両政権で閣僚や党の要職を歴任した。その責任を自覚するなら、負の遺産も直視し、その清算指導力を発揮すべきだ》(同)

 公文書の改竄は本当に<前代未聞>なのか、これほどあっさり改竄したのは、改竄に抵抗感がなかったからではないかと思われるのであるが、この辺りの事情は分からない。が、<真相解明>というのなら2つ指摘したいことがある。1つは、赤木文書にあるように、森友学園の土地購入における大幅値引きは、官邸とは関係ないということ、もう1つは、赤木氏の問題は、マスコミが個人が背負いきれないほど改竄を大事(おおごと)にしてしまったことが原因なのであって、当時民進党の杉尾秀哉、小西洋之両議員が財務省にかち込みを掛け「決裁文書を出せ」と怒鳴りつけた翌日赤木氏が自殺したということも事実として押さえておくべきである。

《ここにきて、争点に浮上したのが選択的夫婦別姓である。野田氏は熱心な推進派として知られ、河野氏も賛成を明言した。一方の高市氏は慎重派の代表格。岸田氏には反対派への配慮もうかがえるが、実現をめざす党内の議員連盟の呼びかけ人であり、もともとは推進派のはずだ》(同)

 <選択的夫婦別姓>とは、マルクス・エンゲルス共産党宣言』にある「家族解体」を目指す共産主義思想である。選択出来ることは良い事だなどと呑気な事を言っていては、「蟻の一穴」よろしく蟻の開けた小さな穴が徐々に広がって最後は堤(つつみ)が決壊してしまうというようなことにもなりかねない。日本文化を切り崩そうとする異文化連にはもっと注意すべきである。

 賛成か反対かという話から歩を進め、独り高市女史は具体的に対策を講じておられる。

《私は令和元年(2019年)9月から1年間、再び総務大臣を務めましたが、その1年間で、『地方自治法』『住民基本台帳法』『公職選挙法』『消防法』『放送法』『電気通信事業法』をはじめ、総務省の所管法令を全部チェックし、申請などの時に戸籍名しか使えないものを全て旧氏単独や併記で対応できるように変更しました。

 総務省単独で対応可能なもの合計1142件について、改善が終了しました。

 あとは国の全府省庁が総務省と同じ取組を実施し、地方公共団体、職域団体、事業者などに同じ取組を要請すれば、旧氏を通称使用しておられる方々が職場や社会生活で不便を感じることは無くなると考えています。

 その為には、私が起草した『婚姻前の氏の通称使用に関する法律案』の成立が必要です。

 この法律案では、「婚姻前の氏(旧氏)」を通称として使用できる措置を、国・地方公共団体・公私の団体・事業者に義務付けていますので、成立・施行されたら、全府省庁や地方公共団体や職域団体において一挙に対応が進むと思います》(高市早苗HP:4月1日付コラム)​【了】​