保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

内乱予備罪で安倍首相を刑事告発する話について

《9月7日に安倍首相を内乱予備罪で刑事告発するという人が現れた》(『AERA dot.2018.9.7 07:00)

「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する」というのが刑法77条の内乱罪であるが、その予備をしたというのである。

 告発者の一人平野貞夫参院議員は、具体的に3つの罪状を指摘する。

「一つ目は今春に明らかになった公文書改竄による国会審議の妨害。二つ目は、昨年、野党側が求めていた臨時国会の召集に対し、冒頭解散に踏み切ったこと。憲法53条が規定する少数者の権利を抹殺する解釈改憲によるクーデターです。そして三つ目が、憲法9条の解釈改憲による集団的自衛権の行使です」(同)

 ここ数年にわたる国政のどたばた劇の1つの総括と言っても良いだろう。<内乱予備罪で刑事告発>などと仰々しい話になっているが、要は、お粗末な議論を今更蒸し返しても見向きもされないので、このような粉飾を施すことになったのだと思われる。

 まず、<公文書改竄による国会審議の妨害>についてであるが、これは安倍晋三首相が権力を行使して公文書を改竄(かいざん)させたという話ではない。ただ、役人が自分たちの個人的な都合のために書き換えたものである。また<国会審議の妨害>という話も、要は、野党の難癖付けに少し影響を与えた程度のもので、そもそも「森友・加計」のような下らない問題を延々引っ張って国会を停滞させた野党側の方が余程問題である。

 次に、<昨年、野党側が求めていた臨時国会の召集に対し、冒頭解散に踏み切ったこと>についてであるが、これが安倍政権の横暴であるのなら、選挙にその結果が片鱗なりとも顕(あらわ)れるはずであるが、はっきり言って皆無であったと言って良い。また、安倍政権の対応が憲法に抵触するというのなら、司法がそれなりの行動に出るべきである。それより臨時国会を召集していたら何か目星い成果が得られたのか、野党側はそのことを自問すべきである。

 最後に、<憲法9条解釈改憲による集団的自衛権の行使>問題であるが、自衛隊保持の解釈改憲を認めておいて集団的自衛行使容認の解釈改憲は認めないというのはご都合主義である。そもそも野党側は憲法論議を逃げようとする嫌いがある。集団的自衛権を行使することは日本の防衛に必要なのかどうかをしっかり議論しようというのならいざ知らず、ただ内閣が集団的自衛行使を容認したのは許せないだけでは無責任である。

 今回の告発は、自滅した負け犬の最後の遠吠えでしかない。

「震度2で電源喪失寸前だった」と原発アレルギーを煽る反原発派マスコミ

《北海道を震度7地震が襲った。気象庁によると、地震の発生は6日午前3時8分、地震の規模を示すマグニチュード6.7で、震源の深さは約40キロと推定されている》(西岡千史『AERA dot.』2019.9.6 14:16)

《なかでも驚かされたのが、北海道電力泊原発(泊村)で外部電源がすべて失われたことだ。泊村の震度は2。にもかかわらず、現在は非常用ディーゼル発電機で、燃料プールにある使用済み核燃料1527体の冷却を続けている。幸いにも、3基の原子炉は運転停止中だった。

2011年の東京電力福島第一原発事故による大きな教訓は、大規模災害が起きても「絶対に電源を切らさないこと」だったはずだ。それがなぜ、わずか震度2で電源喪失寸前まで追い込まれたのか》(同)

 震度2の地震泊原発が壊れ外部電源が失われたかのような書き方になっているが、実際は震度2の地震泊原発が壊れたわけではない。また、外部電源が失われたのは苫東厚真発電所が今回の大地震で停止したためであるが、外部電源が止まっても大丈夫なようにバックアップ電源対策は講じられている。それを<電源喪失寸前>などと言うのは出任せ以外の何物でもない。

 岡村真・高知大名誉教授(地震地質学)は言う。

泊原発には3系統から外部電源が供給されていますが、北電の中で3つの変電所を分けていただけと思われる。北電全体がダウンしてしまえばバックアップにならないことがわかった。今回の地震で、揺れが小さくても外部電源の喪失が起きることを実証してしまった。『お粗末』と言うしかありません」(同)

 岡村氏の思考こそが<お粗末>と言うべきである。何らかの災害で外部電源が喪失されることは想定内である。だからバックアップとして「非常用ディーゼル発電」が準備されているのである。さらにこの非常用ディーゼル発電までもが使えなくなれば「ガスタービン電源車」が用意されている。これが本来の意味での「バックアップ」体制である。

 今回の地震で全道停電などという想定外の事態による泊原発外部電源喪失という想定外の事態に陥った。が、それにもかかわらず、泊原発はバックアップの内部電源を作動させ事なきを得ている。当然と言えば当然であるが、しっかりと想定外の事態にも対応できている。

「北電だけの問題だけではなく、監督官庁である経産省原子力規制委員会にも責任がある。このような事態が起きることを想定して、原発施設の電源確保の仕組みをチェックしていなかったということ。これは大問題です。近づく南海トラフ地震でも、すべての火力発電のブラックアウトを想定しておくべきです」(同)

と岡村氏は言う。が、全道停電は想定外であったとしても、外部電源喪失は想定内のことであり、しっかりとバックアップ電源は確保されている。こういう的外れの批判はやめるべきだ。

台風21号で関西を襲った高潮について

《台風が4日午後に通過した大阪湾では、湾奥ほど最大潮位が上昇。最大3メートル前後の高潮が沿岸各地を襲っていたことが分かった。気象庁大阪府内に設置した記録計によると、大阪市で最大潮位329センチを観測し、死者194人を出した第2室戸台風(1961年)時の過去最高潮位293センチを更新。関西国際空港では滑走路やターミナル周辺が浸水した》(毎日新聞2018年9月5日22時30分)

 この今回の高潮に関しおかしなことを言っている学者がいる。

《台風21号の観測データを基に日本近海や大阪湾の最大潮位を解析した地図を、京都大防災研究所の森信人准教授(沿岸災害学)らの研究チームが作成した…森准教授は「第2室戸台風級の高潮が大阪湾で発生する確率は推定140年に1回程度。今回はそれと同等クラスだ」と分析している》(同)

 第2室戸台風が57年前だから60年に1回程度というのなら分かるが、どうして140年に1回程度ということになるのか。

 それはさて措き、今回の高潮を「想定外」と考える向きがある。が、57年前の第2室戸台風の時も同様の高潮が起こっているのであるから、それを「想定外」などというのは余程想定する頭が弱すぎると言わざるを得ない。

《強い地震があれば誰もが津波を心配する。大阪や東京などの都市型災害では、河川の氾濫や集中豪雨などによる冠水、地下街の浸水への危機意識は広まりつつある。しかし、台風で潮位が盛り上がる高潮や、強風で波が押し寄せる高波について警戒する人は多くない。関西空港の滑走路の冠水や、大阪湾岸でのコンテナの流出、防潮門扉の破壊や沿岸住宅地への浸水など、大阪や神戸で台風21号がもたらした一連の高潮・高波被害は、専門家の間では広く認知されていても、一般的にはあまり関心が向けられない盲点だった》(『AERA』2018年9月17日号)

 <盲点>では決してない。高潮被害については台風が通過するごとに報道されていたことである。が、これまでは今回ほど被害がひどくなかったので気に留めていなかっただけである。痛い目に遭わなければ自分事として受け止められない。悲しいかなそれが人間の性(さが)である。

 が、それでは許されないことは多々ある。だから「教育」というものが存在するのである。経験したことがないことでも、想像することは可能である。例えば、理科の授業において、高潮がどのような仕組みで発生するのかを指導することは可能である。高潮に関する知識がなかったとすれば、それは理科指導の失敗にある(高校入試に高潮に関する問題が出題されているのを目にしたことがあるから中学理科の指導範囲だと思われる)。

 が、教育の失敗というのは少し教師に酷であろう。やはり、日常的なマスコミなどの注意喚起を自分事として真剣に受け止めることが出来なかったことが、高潮においても洪水の避難においても問題だったのだと思われる。

 それが日本を続けざまに襲った自然災害からの教訓だったのではないだろうか。

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(9月10日追記)