保守論客の独り言

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熱海土石流について(4) ~太陽光発電に吹く逆風~

キヤノングローバル戦略研究所杉山大志研究主幹は言う。

アメリカで問題視されたら、日本が何もしないという訳にはいかない。ただ、部品の輸入元を中国から切り替えた瞬間、太陽光発電の価格は跳ね上がる。そうなれば、日本の脱炭素に向けた計画は近い段階で変更を迫られ、企業と政府は温暖化対策の再検討を求められるだろう」(HUFFPOST 20210701 0750分)

 言ってみれば、日本の太陽光発電推進は、ウイグルの強制労働頼みだったということである。太陽光発電は「エコ」であるなどという話は、ウイグル人の人権侵害を前提とした「エゴ」でしかなかったわけである。

ウイグルの人権問題はアメリカが指摘する前に、日本として真剣に考えないといけない。世界の太陽光発電は事実上、中国頼みだが、時間をかけてでも別のサプライチェーンを構築するべきではないか。太陽光発電二酸化炭素さえ減らせばいいという話ではない。企業にも高い人権意識が求められ、自分たちのリスクだと思って考えて欲しい」(同)

《中国・新疆ウイグル自治区の人権問題が、太陽光パネルの価格を押し上げている。主要な原材料であるシリコンの世界生産の約4割を新疆地区が占め、人権問題で供給に影響が出る懸念が浮上したためだ。シリコン価格は1年間で5倍近くに高騰。日本でのパネル価格も3~4割上がった。6月末にはバイデン米政権が中国メーカーへの制裁を表明し、懸念は現実のものとなった》(「ウイグル問題、太陽光発電に影 パネル主原料5倍に高騰」:日本経済新聞202174 0:30

 このような状況にありながら、2030年には太陽光の発電コストが最安となると経産省が言うのは明らかなる情報操作である。これに対し、小泉進次郎環境相が、

「今まで一番安いのは原発だと、こういった前提が変わったこと、画期的なことだと捉えている」(FNNプライムオンライン2021713日 火曜 午後0:40

と言っているのは「情弱」(情報弱者)だからか、何も考えていないのか。

太陽光パネルの大半はシリコンを使う。半導体に使うシリコンほど高い純度は必要なく、その生産は世界シェア約8割の中国に集中してきた。その約半分が新疆地区でつくられている。

価格上昇の発端は20年夏、新疆地区のシリコン工場で火災や爆発事故が相次ぎ、シリコンが品薄になったことだった。関係業界はこれを機に新疆地区にシリコン生産が集まっていることのリスクを認識させられた。

ダメ押しとなったのはバイデン政権の高官が21年5月、強制労働を利用した疑いで中国製パネルを貿易制裁の対象製品に指定するか検討していると明らかにしたことだった。欧州でも中国製パネルを問題視する声があり、供給混乱を懸念したウエハー(注:ICチップ(半導体集積回路)の材料となる、半導体物質の結晶でできた円形の薄い板)やパネルのメーカーが一斉にシリコンの在庫積み増しに動いた。

ガラスやアルミなど他の部材も値上がりしており、シリコンとこれらを組み合わせた太陽光パネルの価格にも上昇圧力がかかった。足元では世界のパネル生産の8割を占める中国製などの出荷価格は1ワットあたり0・22ドルと、1年前に比べ約2割高い》(同)

などなど考えれば、太陽光発電に待ったを掛けるのが自然であろう。

太陽光発電は安価な中国製パネルの利用拡大で設置コストが下がり、風力とともに再生エネルギーの拡大をけん引してきた。ウイグル問題は太陽光発電の要となる素材やキーデバイスを中国に依存している現状の危うさを浮き彫りにした》(同)​【了】​