保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

熱海土石流について(1) ~「盛り土」崩壊の要因~

静岡県は4日、熱海市伊豆山(いずさん)地区で発生した土石流災害について、土石流の発生源付近に置かれていた盛り土が崩れることで大規模化したとの見方を示した。盛り土は開発行為により置かれたものとみられ、土石流の推定総量約10万立方メートルの半分が、この盛り土だったとみている。県は土石流発生の原因は特定していないが、川勝平太知事は同日の臨時会見で「盛り土はやり方によっては危険をもたらす。目的や工法を検証する決意だ」と述べた》(東京新聞 2021年7月4日22時31分)

 たくさんの被災者が出たのだから「盛り土」の<目的や工法を検証する>のは当たり前のことであり、今さらどうして<決意だ>などと言わねばならないのか分からない。私はこの<決意>という言葉に非常に違和感がある。

 今回の災害は、「盛り土」の目的や工法を検証するだけでは済まされるようなものではない。川勝知事はどこか「腫物」に触れないようにしようとしている節がある。

 今回の災害には山林地域における開発の「闇」がある。「産業廃棄物処理」が絡んだ「盛り土」の問題もあれば「太陽光発電施設」の問題もある。

 雨水の通り道である谷間に「盛り土」をすれば、豪雨によってそれが崩れて今回のような災害を引き起こしかねないということは誰の目にも明らかなことである。だから今回のような「盛り土」は、そもそもやってはならなかったのである。それを許した行政の責任は大きい。

 どれくらいの「盛り土」がなされていたのかは、国土地理院が解析した2009年と2019年の測量をみれば分かる。

f:id:ikeuchild:20210720081407p:plain

f:id:ikeuchild:20210720081423p:plain

f:id:ikeuchild:20210720081436p:plain

f:id:ikeuchild:20210720081451p:plain

 https://www.gsi.go.jp/common/000234173.pdf

 が、「盛り土」だけであれば、今回の降雨量程度であればこのような大惨事にならなかったのではないか。つまり、「盛り土」崩落には別の要因が複合的に関わったのではないかと考えられるのである。

f:id:ikeuchild:20210720081525j:plain

 《盛り土がされた付近の土地は、2006年9月に神奈川県小田原市の解体業者が購入し、県土採取等規制条例に基づいて、土地の盛り土が市に申請され、土砂が搬入された。盛り土部分の土地は11年2月に、熱海市伊豆山の男性に所有権が移っている。

 盛り土から北西には、この解体業者の土地があった。業者は09年以降、がれき類を仮置きしていたため、廃棄物処理法に基づき、東部健康福祉センターが撤去を指導した。

 盛り土の土地を購入した男性は13年以降、産廃が置かれた土地も取得。残った廃棄物を撤去する意思を示し、現在、撤去している。県によると、捨てられたのはプラスチック片などで、1500立方メートルという。

 県や本紙の取材によると、盛り土近くには、太陽光発電設備があり、この男性の関係する会社が発電事業者になっている。

 16年6月には、太陽光発電設備の南側を熱海市が現地調査し、無断伐採を確認。無断伐採をした人は「災害復旧によるもの」と説明したため、市は緊急伐採届を出すように指導。同届は約1年後に市に提出された。さらに、そのすぐ近くでことし6月、土砂が投棄されていると、市から県東部農林事務所に通報があった。同事務所が経緯を調べている》(「熱海・盛り土問題 他に6カ所土地改変」:中日新聞 2021年7月9日05時00分)​【続】​