保守論客の独り言

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旭川医大における北海道新聞記者の違法取材について(1) ~自由と権利の保持には不断の努力が必要~

旭川医科大学(北海道旭川市)の校舎内に許可なく入ったとして、北海道新聞社の記者(22)が建造物侵入容疑で大学関係者に現行犯逮捕された事件で、旭川医大は24日、記者が会議内容を無断で録音していたとして、同社に抗議文を送ったことを明らかにした》(6月24日付朝日新聞デジタル

 たとえ新聞記者であっても大学構内に不法に侵入し会議内容を無断録音することが許されるはずがない。そう考えるのが一般常識というものだろう。

朝日新聞の取材に対する旭川医大の回答によると、職員が選考会議の会議室から廊下へ出ようとしたところ、扉の隙間から会議内容を録音していた記者に出会った。職員が身分や目的を尋ねたが明確な返答がなく、逃げ去ろうとしたため、学外者が無許可で建物内に侵入したと判断し、警察へ連絡したとしている》(同)

 が、一般常識が通じない人達がいる。朝日新聞記者で前新聞労連委員長の南彰氏はツイッターで次のように呟(つぶや)いた。 

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 南氏は、新聞記者には「治外法権」があるとでも言いたいのだろうか。

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 守りたいのは件(くだん)の記者か、それとも自分達の「治外法権」か。

《報道関係者の間では「こんな逮捕が認められるなら権力チェックは難しくなる」と衝撃が走っている》(「旭川医大の『北海道新聞』記者常人逮捕に疑問の声噴出」:週刊金曜日7/5() 12:59配信)

 が、このような言い方は、違法取材を認めてもらわなければ<権力チェック>ができないと自らの無能振りを告白しているようなものだ。

《既存メディアに「公共」であるがゆえに与えられてきた特恵的な地位を「特権」と勘違いし、またそうした優遇措置を守ることが目的化するとき、メディアの自己崩壊が始まるといえる。だからこそ、公共的な存在であり続けるためには、条件を着実に実行するための不断の努力がメディア白身に求められるし、市民社会自体がそれを監視する力を持たなくてはなるまい》(山田健太『法とジャーナリズム』(勁草書房)第3版、p. 90

 日本国憲法第12条にも

この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によつて,これを保持しなければならない。又,国民は,これを濫用してはならないのであつて,常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

とあるように、自由や権利を保持し続けるためには弛(たゆ)まぬ努力が必要なのであって、ただふんぞり返って自由や権利を主張するようなことでは国民の理解は得られまい。

北海道新聞社からは今回の事件について、記者の取材が建造物侵入容疑を上回る公益性、公共性を有していたとの説明はない。仮に同社が「公益性が上回っている」と判断しているのであれば、それをきちんと世に問い、場合によっては公判になっても主張し続ける覚悟が要るだろう》(高田昌幸「市民の知る権利に応えてこその「報道の自由」――「記者逮捕」を考える〈中〉」:論座 20210630日)​【続】​