保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

デジタル教科書について(1) ~弱い利点~

《主に小中学校でのデジタル教科書の本格導入に向けた文部科学省有識者会議は22日、導入を前提とした5つの方法案を盛り込んだ中間まとめ案を概ね了承、今後は実証事業を経て検討が進められることになった》(2月22日付産經ニュース)

 が、先の大学入試改革でも見られたように、碌なことをしない文科省のことであるから、甘言に乗せられることのないよう注意が必要である。

(同)

 中間まとめにある<教科書のデジタル化(ビューアの機能を含む)によるメリットの例>を見てみよう。まず、

・直接画面に書き込みができ、その内容の消去や、やり直しを簡単に行うことができるため、作業に取り掛かりやすく、試行錯誤することが容易である。

ということが挙げられている。が、紙の教科書に比して特段に利便性が高いとは思われない。次の、

・ペア学習やグループ学習の際、デジタル教科書に書き込んだ内容を見せ合うことで、効果的に対話的な学びを行うことができる。話合いの際に相手の意見を書き足したり、自分の意見を変更したりしながら活動できるため、より相互の理解を深めることができる。

というのも疑問である。そもそも<対話的な学び>とはどのようなものを想定しているのだろうか。言うまでもなく、ただ<対話>があれば学習が促進されるなどということは有り得ない。このことはデジタル教科書の有る無し以前の問題である。

・端末だけを持ち運びすることとなれば、授業や家庭学習で用いる教科書の持ち運びの通学上の負担が軽減され、身体の健やかな発達にも資する。

 分厚く重い教科書を家に持ち帰り学習することは非現実的であるから、端末が簡便であることは言うまでもない。が、それは<身体の健やかな発達にも資する>などという話とは少し違うように思う。このようなことを言う有識者の資質に私は疑問を感じる。

 やはり最大の利点は<デジタル教材や他のICT機器・システムとの連携によるメリットの例>に挙げられている

・デジタル教材との連携がしやすく、動画や音声等を併せて使用することにより、学びの幅を広げたり、内容を深めたりすることが容易になる。

ということであり、紙教科書との最大の差別化であることは間違いない。

 が、動画や音声が必要な部分は全体から見れば極一部に過ぎない。また、授業中にプロジェクターを用いて動画を観せることも行われているので、大きな利点と呼べるほどのものでもない。

 音声にしても、例えば、家庭学習において英語のネイティブの発音を聞くことができるのは確かに利点ではあろうが、これも授業中の速度を調整したコーラスリーディングや発音のコツ等の指導があればこそで、補足的なものに過ぎないのである。【続】