保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

原発再稼働問題を考える(3) ~安全意識の欠落~

東京電力柏崎刈羽原発新潟県)で、核物質防護設備の機能が一部喪失し、実効性のある代替措置が講じられていなかったため、2020年3月以降、テロ目的などの不正な侵入を検知できない可能性があったことが分かった。侵入検知設備が計15カ所で故障し、うち10カ所の代替措置が不十分だった。

 原子力規制委員会は「核物質防護上、重大な事態になり得る状況にあった」とし、安全重要度も深刻度も最悪レベルとの評価を示した。最悪の評価は初めてだ》(3月19日付山陽新聞社説)

 福島第1原発事故の検証事実が明らかになるにつれ、「然(さ)もありなん」としか私には思われない。こういうことでは、原発は必要だと思っている私のような人間でさえ再稼働に疑問符を打たざるを得なくなってしまう。

柏崎刈羽原発では今年1月、所員が同僚のIDカードを使って中央制御室に不正に入室した問題も発覚している。原発を標的にしたテロ行為の脅威が国際的に高まる中、防護対策が軽んじられていたことに強い懸念を禁じ得ない。原発を運転する企業としての適格性が疑われる事態と言えよう》(同)

 この意識の低さは何なのか。もはや日本人に高い規範意識を期待することは出来ないということなのだろうか。

原発核燃料サイクル施設は、ウランやプルトニウムなどの放射性物質を大量に保有している。これらを強奪したり、原発を攻撃したりする核テロへの備えは原発の運転に不可欠だ。防護対策として不正侵入を防ぐフェンスや監視カメラを備え、敷地や重要施設に立ち入る際には厳重な身元確認が求められている。

 だが、規制委によると、警備担当の東電社員は、代替措置に実効性がないことを認識していたのに、改善していなかったという。担当社員ら関係者には、安全や核防護に対する意識が欠落していると断じざるを得ない》(同)

 そもそも安全対策は<意識>で行うべきものではない。人間は過失を犯すものであることを前提として体制を組むのが鉄則である。

 電気事業連合会のホームページに「深層防護」についての解説がある。

原子力発電所の安全確保の考え方は「深層防護」を基本としています。「深層防護」とは、何重にも安全対策がなされていることを意味します。

原子力発電所ではこの考え方に基づいて、トラブルの未然防止を第一の目標に「人間はミスを犯す」「機械は故障する」ことを前提に、人間の誤操作や機械の誤動作があっても安全が確保されることを目指しています。仮にトラブルが発生しても、トラブルの拡大を抑え、影響を最小限に止めることを目指しています》 https://www.fepc.or.jp/nuclear/safety/shikumi/boug

 まして「テロ対策」ということになれば、万全の上にも万全を期す「仕組み」が必要である。

 安全対策が出来ていないのに再稼働など有り得ない。再稼働の必要性は、やるべきことをちゃんとやってから説いてもらいたいものである。【了】