保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

参院選1票格差の最高裁「合憲」判断について(5) ~格差解消の妙案~

《1972(昭和47)年12月に行われた衆議院総選挙について,最高裁は,当時最大で1対4.99に達していた投票価値の較差につき,議員定数配分規定全体が不可分一体として違憲の瑕疵(かし)を帯びるにいたっていると判断したが,その前提として,「選挙権の内容,すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた,憲法の要求するところであると解するのが,相当である」とした(最大判昭和51・4・14民集30巻3号223頁)》(長谷部恭男『新法学ライブラリー2 憲法』(新世社)第6版、p. 174)

 が、最高裁はどの程度の投票価値の較差が違憲となるのかについて明確な数字を示しているわけではない。

《学説では,1対2を許容されうる最大較差とする説が有力に唱えられているが,その理論的根拠はさほど確かなものではない。むしろ,1対1を基本原則とした上で,どのような理由と必要に基づいてこの原則から乖離したかを,政府の側に立証させることで,その合憲性を審査すべきだと考えられる。政府が,議員定数の較差を正当化する十分な理由を示すことができない場合には,違憲とすべきであろう》(同、p. 176)

 今回の判決と合わせれば、衆院は2倍、参院は3倍までを許容範囲とするということになるのだろうが、気になるのは、合憲とするのか違憲とするのかを政府の立証次第としているところである。線引きが難しいからこのように言うのだろうが、やはり最終判断は総合的なものであるべきなのではないか。

 ここで、投票価値を平等化する「妙案」がある。あくまでも頭の体操ということであり現実味があるかどうかは別にして聞いてもらえれば、有権者数に応じて選挙区や議員数を弄(いじ)るのではなく、選挙区および議員数に応じて有権者数の方を弄るという逆発想である。つまり、都会から地方に人に移住してもらうのである。

 地方創生とお題目を唱えはするものの、実態としては何ら成果を挙げてはいない。そこでしっかり腰を据え、地方に移住してもらえるよう税の優遇をはじめ、交通の整備、住宅補助、地産地消の推進等々、様々な優遇措置を総合的かつ一斉に講ずることを求めたい。

 大取りは参院改革問題である。

参院衆院カーボンコピーとやゆされて久しい。衆院の数の暴走を抑止する「良識の府」としてのチェック機能を期待されながら、党議拘束など政党主導の運営が目立つ。

 参院の独自性をどう立て直すかという本質の議論が必要な時期はとうに来ているはずだ。二院制の役割や位置付けをしっかり問い直した上で、改憲なり、ブロック制なりを含めた議論を進めるべきである》(11月20日付高知新聞社説)

 <衆院カーボンコピー>と言われ続けてもなお、変革の見込みがないとすれば、参議院を廃止し、一院制を採用することも議論の対象とせざるを得ないだろう。いずれにせよ自己改革は難しいのであろうから、マスコミをはじめとして識者が議論を促す必要がある。

 さて、これも突拍子もない意見だが、参議院が「良識の府」であるためには、参議院議員を選ぶ有権者もそれなりの「良識」が必要だと考える。つまり、「制限選挙」ということも議論の対象とすべきではないかということである。が、おそらく時代錯誤であるとか、時代に逆行するような話と一蹴(いっしゅう)されるに違いない。多勢に無勢(ぶぜい)であるから致し方ないのではあるが…【了】