保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

「GO TO・桜・学術会議」(1) ~「GO TOキャンペーン」編~

「GO TOキャンペーン」、「桜を見る会」、「学術会議人事介入」。これらのどれにもまったく触れないのも異様であろうが、これを三幅対(さんぶくつい)で論難するのもまた異様である。

 そして「GO TO・桜・学術会議」を一組にし、嬉々(きき)として難じるのが朝日新聞東京新聞である。

《「Go To」はそもそも4月の閣議決定では、感染収束後に実施することにしていた事業である。それを政府は7月に見切り発車した。ただ、条件は「状況を的確に判断し、臨機応変に対応する」(西村康稔担当相)ことだったはずだ。

 ところがである。秋に入って感染が急拡大しても、「すでに予約も入っており、今から変更することは難しい」(西村担当相)と、見直しを拒んできた。これでは約束が違うではないか。専門家でつくる政府分科会の提言に背中を押されてやっと動いたが、あまりに反応が鈍いと言わざるを得ない》(11月25日付朝日新聞社説)

 「GO TO キャンペーン」に関しては、私も首を傾げるところがないでもない。感染拡大がどうのこうのと言う前に、あまり筋の良い政策だと思えないのである。「GO TO トラベル」で観光業を助け、「GO TO イート」で飲食業を助ける。このようなやり方では助ける業種と助けない業種が出来てしまい、どう転んでも「依怙贔屓」(えこひいき)と成らざるを得ない。

菅義偉首相が「GoTo」事業の見直しを表明した。ただ変更の中身が完全には明確にされていない上、対応を自治体に委ねる姿勢も目立つ。国は政策の実行責任者として強い自覚を持つべきだ。

 菅首相は先週末これまでの姿勢を一転し、事業を一時制限する方針を示した。しかし新型コロナはその前から急激に再拡大しており、事業継続を懸念する声も出ていた。首相判断は遅きに失したといえるだろう》(11月25日付東京新聞社説)

 おそらくその通りなのであろう。筋の悪い政策だから、変な制約があって、筋の悪い対応と成らざるを得ないということなのではないか。

《今回、感染の増減に応じて事業を縮小したり停止したりする具体的な手段や基準がなかったことも露呈した。感染の再拡大は容易に想像できたはずだ。政策の出口戦略を用意していなかった形であり、国に猛省を促したい》(同)

 が、<出口戦略を用意していなかった>というよりも観光業の支援を政府がただ優先しているだけなのではないか。11月より外国からの入国制限が緩和されてもおり、<出口>云々の話ではないように思われる。

君子は只(ただ)是れ、逆に来たらば順に受け、安きに居りて危きを思うのみ。天も亦(また)其の伎倆(ぎりょう)を用(もら)うる所無し。

(君子たる者は、心配のない状況にある時には、本心を堅く守って、いったん事が起こった場合のことを考えておき、不時の災難に遭遇した時には、忍耐に忍耐を重ねて、難を逃れ、事が成就することを計るべきである)(洪自誠『菜根譚』(講談社学術文庫)中村璋八・石川力山訳、pp. 157-158)

 だとすれば、差し詰め日本に<君子>はいないということになるのだろうか。【続】