保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

日本学術会議人事について(2) ~形式的任命という口約束~

《政府は「形だけの推薦制であって、推薦していただいた者は拒否しない。形だけの任命をしていく」(83年、参院文教委)と答弁していた。政府による干渉や中傷、運営の口出しはしないと明言した》(10月3日付琉球新報社説)

 が、こんな無責任なことが国会で明言され慣例化してしまっているのがおかしいのではないか。本来「任命」には責任が伴う。が、<形だけの任命>と言ってしまっては、最終的に誰が責任を負うことになるのだろうか。

 琉球社説子は、国会でこのような言質(げんち)をとってあるのだから、日本学術会議の推薦には触れるなとでも言いたいのだろうか。同様の指摘は他紙社説にも見られる。

《これまで政府は、介入の懸念を持たれないよう「推薦は拒否せず、形だけの任命をしていく」とする83年の国会答弁を継承し、推薦通りに任命してきた》(10月3日付神戸新聞社説)

日本学術会議法は、学者による政府の政策提言機関である同会議を首相の所轄とする一方「独立して」職務を行うと規定している。政府も1983年の参院委で、会員候補につき「形だけの推薦制で、推薦された者は拒否はしない」と答弁していた》(10月3日付沖縄タイムス社説)

 国会でのおかしなやり取りを確認しておこう。次は、1983(昭和58)年5月10日の参議院文教委員会のものである。

○政府委員(手塚康夫君) 私どもは全くの形式的任命というふうに考えており、法令上もしたがってこれは形式的ですよというような規定、ほかにも例がございませんが、書く必要がないと判断して現在の法案になっているわけでございます。

○高木健太郎君 法律に明文化されておりませんので、いまの審議官がおっしゃったことをそのまま私信用するわけにはまいりませんが、この委員会においでの方はすべてそのようにお考えだと思いますので、強くその点はしっかりと記憶していただく、しっかりと守っていただくということをここで言明をしていただきたい。長官にひとつお願いしたいと思います。

国務大臣丹羽兵助君) せっかく高木先生からの御注意であり、要請でございますし、当然なことでございますから、この場で責任のある大臣として、長官として、いま事務当局から答えましたように、守らしていただくことをはっきり申し上げておきたいと思います。

 後日5月12日の参議院文教委員会でも同様のやり取りがあった。

○説明員(高岡完治君) ただいま御審議いただいております法案の第7条第2項の規定に基づきまして内閣総理大臣が形式的な任命行為を行うということになるわけでございますが、この条文を読み上げますと、「会員は、第22条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣がこれを任命する。」こういう表現になっておりまして、ただいま総務審議官の方からお答え申し上げておりますように、210人の会員が研連から推薦されてまいりまして、それをそのとおり内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を私どもは解釈をしておるところでございます。この点につきましては、内閣法制局におきます法律案の審査のときにおきまして十分その点は詰めたところでございます。

○粕谷照美君 たった1人の国立大学の学長とは違う、セットで210人だから、そのうちの1人はいけませんとか、2人はいけませんというようなことはないという説明になるのですか。セットで210人全部を任命するということになるのですか。

○説明員(高岡完治君) そういうことではございませんで、この条文の読み方といたしまして、推薦に基づいて、ぎりぎりした法解釈論として申し上げれば、その文言を解釈すれば、その中身が200人であれ、あるいは1人であれ、形式的な任命行為になると、こういうことでございます。

○粕谷照美君 法解釈では絶対に大丈夫だと、こう理解してよろしゅうございますね。

○説明員(高岡完治君) 繰り返しになりますけれども、法律案審査の段階におきまして、内閣法制局の担当参事官と十分その点は私ども詰めたところでございます。【続】