保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

原爆投下について(1) ~戦争勝利に原爆投下は不要だった~

米紙『ロサンゼルス・タイムズ』に、「合衆国指導者たちは、米国が戦争に勝利するために日本に原爆を投下する必要がないことは分かっていた」と題する記事が掲載された。寄稿者は歴史学者のガー・アルペロビッツ、マーティン・シャーウィン両氏である。

The accepted wisdom in the United States for the last 75 years has been that dropping the bombs on Hiroshima on Aug. 6, 1945, and on Nagasaki three days later was the only way to end the World War II without an invasion that would have cost hundreds of thousands of American and perhaps millions of Japanese lives. Not only did the bombs end the war, the logic goes, they did so in the most humane way possible.

However, the overwhelming historical evidence from American and Japanese archives indicates that Japan would have surrendered that August, even if atomic bombs had not been used — and documents prove that President Truman and his closest advisors knew it. ― AUG. 5, 2020

(過去75年にわたって合衆国でほとんどの人が正しいと考えてきた見解は、何十万人ものアメリカ人とおそらく何百万人もの日本人の命が失われたであろう侵攻なしに第2次世界大戦を終わらせるには、1945年8月6日の広島、その3日後の長崎へ原爆を投下するしかなかったというものだ。原爆は、戦争をただ終わらせただけでなく、論理的に言って、最も人道的なやり方で終わらせた。

しかしながら、アメリカおよび日本の公文書に見られる確かな歴史的証拠から、たとえ原子爆弾が使われなかったとしても日本はその8月に降伏していたであろうことは明らかであり、様々な文書からトルーマン大統領と彼の側近はそのことを知っていたということが分かる)

 日本が終戦を望んでいたことは明らかである。東郷茂徳外相(当時)は1945年6月20日の内奏について次のように書いている。

《20日参内して、一昨日鈴木総理と打合せた通り、構成員会合の申合せにつき「ソ」聯と交渉に入る目的および仲介者として「ソ」聯を適当と認めたる理由、並びに「ソ」聯に対しては、このさい思い切った代償を提供することに話合いたること、かつまた広田氏に交渉を依嘱せる経緯およびその後の経過につき詳細上奏した。

 陛下は右は戦争終末の関係上まことに結構な措置と思う、戦争に就ては最近参謀総長軍令部総長および長谷川大将の報告に依ると、支那および日本内地の作戦準備が不充分であることが明らかとなったから、なるべく速かにこれを終結せしむることが得策である、されば甚だ困難なることとは考えるけれど、なるべく速かに戦争を終結することに取運ぶよう希望するとの御沙汰を拝した。よって自分は、戦時の外交は戦局の推移に影響せらるることが至大でありますから、このさい有利な条件によって戦争を終結せしむることは不可能でありますが、思召しに適うよう粉骨砕身御奉公仕るべきことを御答えして退出した》(東郷茂徳『時代の一面』(中公文庫)、p. 487)

 何故ソ連に仲介してもらおうと考えたのだろうか。中立条約を結んでいる国だから、仲立ちしてもらえると思ったのか。が、ソ連が日本と中立条約を結んだのは、日本とドイツの二方面で同時に軍事展開出来ないからであって、決して日本に友好的だったからではない。そんなことも分からないほど当時は共産主義コミンテルンが政治の中枢にまで入り込んでしまっていたということなのであろう。【続】