《北海道紋別市の川で1日、アイヌ民族の畠山敏さん(77)が、サケの捕獲は認められた先住権だとして、道の許可を得ずに儀式用のサケ十数匹を捕獲した。道職員が制止する場面もあったが、畠山さんは「サケ漁をするかどうかは自己決定権だ」として決行した》(日本経済新聞2019/9/1 11:31>)
《先住権は先住民族の集団に認められた権利。国は昨年5月に施行した法律で、アイヌ民族を初めて「先住民族」と明記したが、アイヌ民族の集団は存在しないとして先住権を認めていない》(日本経済新聞2020/1/12 17:46)
が、学術的にはアイヌを「先住民族」と呼ぶことには無理がある。
アイヌが「先住民族」であるというのは至って政治的なものだ。だから、「アイヌ民族は先住民族だが、今はアイヌ人はいてもアイヌ民族という集団は存在していないので、先住権は認められない」などと、いかにも政治的な落着となっているのである。
「サケ漁をするかどうかは自己決定権だ」と言うのも無茶苦茶である。サケ漁は公共の場で行われる。にもかかわらず<自己決定権>だなどと嘯(うそぶ)くのは居丈高に過ぎよう。
《川でのサケ漁は水産資源保護法で禁止されているが、北海道内水面漁業調整規則は伝統儀式と漁法の伝承での特別採捕を認める。
ただ、あくまで申請が条件だとして、道は同法違反などの疑いで畠山さんを紋別署に告発した》(2019年9月22日付北海道新聞社説)
「国連宣言がうたう先住権の観点から、畠山さんの行為は、先住民族の自己決定権に基づき、国際法上正当だ」(同)
が、従来のアイヌのサケ漁は銛(もり)を使ったもので、網を使うのは伝統に反する。これでは<伝統儀式と漁法の伝承での特別採捕>とは言えない。申請もしていなければ、アイヌの伝統にも合わない。当然罰せられると思いきや、
《川のサケ漁は先住民の権利だと主張し、行政の許可を得ずに紋別市内で漁をした疑いで書類送検されたアイヌの男性など3人について、検察庁は30日、全員不起訴にしました。関係者によりますと、いずれも起訴猶予とみられます》(NHK WEB NEWS 北海道 2020年6月30日)
検察はどうして司法の場で白黒を付けようとしなかったのか。これでは暗にアイヌのサケ漁を認めてしまったことになりやしないか。
《水産庁は「特定の集団に漁業権を設けることは憲法14条の法の下の平等に反する恐れがある」というが、14条は社会的・経済的弱者を厚く保護して格差を是正する「実質的な平等」を含むとされる》(同、北海道社説)