保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

都知事選について(2) ~現職は「公約」よりも「実績」の評価が必要~

現職候補が信任されるか否かは耳触りの良い「公約」よりもむしろ「実績」の評価にあるべきだ。

《小池氏は前回知事選で待機児童ゼロや介護離職ゼロといった「7つのゼロ」を掲げたが、そのほとんどは達成できていない。同じ轍(てつ)を踏むことは許されない》(7月6日付産經新聞主張)

 さらに言えば、豊洲移転問題のごたごたもある。

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 (2020年6月28日(日)付しんぶん赤旗電子版)

 実行がおよそ不可能な綺麗事を並べ立て当選した前回。今回の選挙では身に纏(まと)った虚飾を引き剥がすことから始めなければならなかったのではなかったのか。

 そういう地に足の着いた検証が等閑(なおざり)にされてしまったことに味を占め、「グレーター東京構想」だの「ワイズ・スペンディング」だの「フレイル政策」などと「意識高い系」の若者のようにカタカナ英語で有権者を煙に巻いた。

(注)greater東京構想=大東京圏構想、wise spending=賢い支出、frail政策=虚弱政策

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東京大学高齢社会総合研究機構「フレイルを予防して健康寿命をのばしましょう」)

有権者は都政の「継続」を選んだ。都知事が再選されるのは、9年ぶりである。石原慎太郎氏から3代の辞任が続いた影響だ。

 トップが次々に代われば、組織の方針は二転三転する。知事主導の計画、施策がいくつも破棄されてきた。都政の混乱に終止符を打ちたいと有権者が望むのは、自然な流れではある。

 未曽有のコロナ禍が、小池氏に有利に働いた面もあるだろう。人々は危機に直面すれば、これ以上の混乱を避けたいと、安定志向が強まるからだ》(7月6日付東京新聞社説)

 都政の混乱に終止符を打ちたいがために小池女史続投を選んだなどというのは、おそらく小池女史を信認したくないがゆえの屁理屈である。普通なら小池女史が当選するはずがない。が、今回は都政混乱という特殊状況下での選挙であったから、このような結果となったのも無理はなかった、そう言いたい(思いたい)のであろう。

《近年、世界で変革のうねりが起きていることを思い起こしたい。国連が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)。経済最優先からの決別である》(同)

 が、世界にはこんな<変革のうねり>など起きてはいない。あるのはSDGsという新奇な考え方を流行らそうとしている人達がいるだけである。

《日本でも、そして東京でも経済成長が頭打ちになり、人口減少と少子高齢化が進む。

 一極集中が地方の活力を奪い、都民自体の暮らしも、住宅や子育て、老後や防災の備えなど決して豊かとは言えない》(同)

 このあたりの議論は簡単ではないので稿を改めたいが、SDGsが言われるようになる前から、GDP成長率という物差しの見直し、物質的豊かさと精神的豊かさの平衡、物作りから価値作りへの産業構造の転換などが言われてもきた。

《人々の意識の上では国のため、会社のためという観念が薄れ、個人を尊重する風潮が高まっている。働き方改革、障害者や性的マイノリティー(LGBT)の権利向上はその延長線上にある》(同)

 が、国や会社のためを思う人が減り、国や会社が弱体化してしまっては、むしろ個人を尊重できなくなりかねない。社会と個人の平衡を考えない自分勝手な権利要求は得るものよりも失うものの方が大きいという結果になりかねない。【了】