保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

地上イージス配備計画停止について(1) ~判断の難しい<費用対効果>~

陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画の停止を河野太郎防衛相が表明した。これに対し、各紙社説は例によってぼろかすに書く。

《費用対効果に疑問をもたれながら、「導入ありき」で突き進んだあげく、地元の強い反対に直面し、破綻(はたん)を余儀なくされたとしか見えない》(6月17日付朝日新聞社説)

 このようにしか見えないのであれば、恥ずかしいから社説など書かない方が良い。地元の強い反対に遭(あ)ったから停止になったなどと考えるのは青臭すぎる。

 が、同様のことを他紙も書いている。

《防衛政策の柱とされる地上イージス配備計画が停止に追い込まれたのは、計画のずさんさや、住民の強い反発があったからだ》(6月17日付沖縄タイムス

 「人は往々にして自分が見たいと思うものしか見えない」ものなのであろう。

 <費用対効果>についても、この場合の<効果>とは何かを言うのは存外難しい。どの程度の確度でミサイルを迎撃できるのかという純軍事技術的なことだけが問題なのではない。このシステムを導入することで日米の軍事連携がより密になるということもある。米国との貿易摩擦を緩和するという側面もあろう。が、何より大事なのは、トランプ大統領のご機嫌をとれるということである。

 このようなことを言うのは情けない限りだし、短期的には無理でも、中長期的には、こういった米国の無理難題は押し返せるような力関係を構築すべきだと思う。が、現今のように、日本が米国に隷従してしまっている以上、どうしようもないではないか。

《河野防衛相は、山口県で迎撃ミサイルを発射する際、推進装置が自衛隊の演習場外に落下する恐れが排除できない、と説明した。安全性を担保するためのシステム改修には、数千億円がかかる。

 イージスアショアの経費は、本体2基とミサイルなどで約7000億円に上り、高額過ぎると批判を受けた。計画停止は、これ以上の支出は困難との判断からだ》(6月17日付読売新聞社説)

 どこまで本気で書いているのか知らないが、日本人の生命と財産を守るために、この装備がどうしても必要だというのなら、これくらいの出費でがたがた言うべきではない、とも言えるだろう。つまりお金の問題ではないということである。

 私は米国の方針が変わったということなのだろうと思うが…

《計画停止は遅すぎたといえる。配備ありきで、ずさんな政策に固執してきた安倍政権の失態は明らかだ》(6月17日付京都新聞社説)

 安倍政権が主体的に<固執>してきたのではない。米国の要求を拒否できなかっただけの話である。【続】