保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

芸能人の政治的発言について(1) ~自分だけの自由を欲しがる人達~

《今国会での採決が見送られた検察庁法改正案を巡り、民主主義の根幹を揺るがしかねないと感じた社会現象があった。芸能人らが会員制交流サイト(SNS)で発した法改正反対の意見に、差別発言とも言える批判が出たことだ》(5月24日付河北新報社説)

 <差別発言とも言える批判>が飛び交うのがネット社会の現実というものであり、自分の意見をネットで公開すれば、この手の批判が返ってくることを一定覚悟しておかなければならないのは言うまでもないことである。

 勿論、私は「差別」を肯定するわけではない。が、何をもって「差別」と言うのかの線引きも難しいし、「差別」だとの批判を恐れて自粛すれば、隔靴搔痒(かっかそうよう)の如く、議論がもどかしいものとなりかねない。

ツイッター上では8日夜、女性が「検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ(検索目印)を付けて投稿したのをきっかけに、改正反対の声が相次いだ。

 11日午後3時までの3日足らずで、ツイート数は約473万件。学識経験者の分析によると、一部の人が全体の数字を押し上げる行為をした実態はあるものの、実際のアカウント数から少なくとも数十万人が直接、ハッシュタグを付けて投稿したという》(同)

 偽のアカウントを使うなどしてツイート数を水増しする行為は許されないし、たとえ実際のアカウントからであっても、その中には外国人のものもあれば、1人が複数のアカウントを使ってカウント数をふやしているということもあるだろう。SNSはそのあたりの事情を差し引いて見る必要がある。

《今国会での成立が見送られた検察庁法改正案では、芸能人による抗議のツイッターでの広がりが注目を集めた。

 俳優の小泉今日子さんや井浦新さん、音楽家大友良英さんらが次々と声を上げた。類似の投稿は数百万にのぼった》(5月24日付毎日新聞社説)

などと無批判に投稿数の多さに言及するのは「我田引水」の誹(そし)りを免(まぬか)れぬであろう。

《影響力のある芸能人からの発信が、若者や政治に関心の低い人たちも引きつけ、法案の成立断念につながった》(同)

 これは危険である。発信内容が正鵠(せいこく)を射たものであったというのならともかく、発信者が<影響力のある芸能人>であったということだけでツイート数が増えていったという現象は、物を深く考えない軽薄な人間がたくさん存在するということを明らかにしたにすぎない。政治が世間の声の大きさだけに直接左右されるようでは「衆愚政治」と呼ばれても仕方がないのではないか。

 国会前でデモをやっても変えられなかった人たちが、SNSという新たな政権批判の手段を手に入れたというのが今回の一件ではなかったのか。【続】