保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

GDP連続減について(3) ~発想の転換が必要だ~

《企業経営者は「新常態」に適応した働き方改革や収益戦略を練り直し、国民一人ひとりの感染防止に向けた努力も改めて問われよう》(5月18日付日本経済新聞社説)

 景気が堅調であれば、働き方を見直そうという話も分からなくもないが、今直面している困難な状況において、<働き方改革>などというものを持ち出すのは「KY」(空気が読めていない)としか思われない。

 勿論、これは、コロナ禍以前の議論とは異なり、「フレキシブルタイム」や「テレワーク」といった新たな議論が起こり、働き方の抜本的見直しというようなところまで見込まれる話なのかもしれない。

 が、今はコロナ禍が一定収束した後、どうやって経済を立て直すのかということに専心すべき時なのではないか。働き方云々は景気が回復した後のことである。

 一部上場企業のレナウンが倒産し、三菱UFJ銀行が35%の店舗を閉鎖し、ロイヤルホストホールディングスも70店舗ほどを閉店する、といった暗い話が続々と出て来る中で、<働き方改革や収益戦略>などという話になるのは「経世済民」というものが分かっていない証左であろう。

《長期化に備え、経済の基盤が損なわれないようにする対策が必要だ。まずは国民生活に直結する雇用を守ることである。

 コロナ禍は立場の弱い非正規労働者を直撃した。3月は過去最大の26万人減だった。今は2%台の失業率も、派遣切りが相次いだリーマン・ショック時を超す6%台に悪化するとの試算がある。

 安倍晋三首相はこれまで雇用改善をアベノミクスの成果としてきた。だが非正規労働者が雇用全体の4割も占め、実態は脆弱(ぜいじゃく)だ》(5月20日付毎日新聞社説)

 確かに、こういった非常時には非正規雇用といった「労働弱者」にしわ寄せがいくことは想像に難くない。が、おそらく戦後復興後、最大と思われる危機的状況においてまず考えるべきは、日本経済全体をどう立て直していくかということであろう。

 その際、気懸かりなのは、コロナ禍以降の日本経済をどのような形にもっていこうとするのかの「青写真」がないことであり、これからの日本が目指すべき方向性がまったくといって議論されていないことである。

 アベノミクス最大の失敗は、金融緩和によって円安となり、時代と共に移り行くべき産業構造を、時計の針を逆戻しにするかのように旧態依然とした形で残存させてしまったことにある。今後生産人口がさらに減少するのであれば、低賃金労働による「物作り」から生産単価の高い「価値作り」へと構造転換していく必要がある。

 将来を見据えた経済再興のためには、同じ補助を行うにしても、万遍なく平等に補助を行うのではなく、減り張り(めりはり)を付けた戦略性のある補助が望ましい。要らぬ嫌疑を掛けられぬためにも、予(あらかじ)めしっかり議論しておかねばならない。

 「弱者」をどう救うのかばかりに目をとられていては、大局を見誤りかねない。【了】