保守論客の独り言

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伊方原発運転差し止めについて

《広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを命じる仮処分決定を出した》(118日付毎日新聞社説)

 科学とは畑違いの裁判官が科学の領域に土足で踏み込んで原発の安全性を判断する。どうしてこんなことが許されるのだろうか。

 裁判官が判断すべきは、安全審査に不備はないか、安全対策が適切に講じられているかといったことであって、科学者を跳び越えて、原発の安全性を判断することではないだろう。

《高度に専門的な理学、工学知識が求められる原発訴訟での大胆極まる「決定」だ。審尋は、たったの1回だった》(118日付産經新聞主張)

というのも舐めているし、

《裁判長は今月25日に退官する。近年の原発訴訟で運転停止を命じる決定が定年退職が近い裁判長から出される傾向は偶然か》(同)

 主張子は名前を伏せているが、裁判長は森一岳(もり・かずたけ)氏であった。評価を免れる退官直前の裁判で、「良心」をかなぐり捨て、政治的主観を述べる裁判官が続くのはやはり問題である。

《今回の運転差し止め理由は、伊方原発が立地する佐田岬半島沿いの断層と原発までの距離だ。

 伊方3号機は原子力規制委員会の厳格な安全審査に合格して再稼働を果たした原発である。

 にもかかわらず、裁判長は四国電力の主張よりも近くに断層が位置すると解釈し、3号機を合格させた「規制委の判断には、その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」とした。

 阿蘇山からの火砕流については、ゼロリスクを理由に伊方原発を立地不適とするのは社会通念に反する、と良識を示したものの、火山灰などの降下量に関して規制委にかみついた。

 四国電力の想定は過小で、それを認めた「規制委の判断も不合理である」とした》(同)

 が、断層は既知のものもあれば、未知のものもある。さらに言えば、新たな断層が形成されることもある。したがって、日本列島において、どこが危険かは神のみぞ知ることでしかない。にもかかわらず、「規制委の判断には、その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」などと言うのは神をも恐れぬのただの勘違い野郎でしかない。

 火山灰の話も反原発の政治思想からくるただの「妄想」である。森裁判長は裁判官としてあるまじき醜態を晒したと言うべきである。

原発の安全審査に関しては、高度で最新の科学的、技術的知見に基づいた行政側の審査結果を尊重する司法判断が、これまで積み重ねられてきた。今回の高裁決定は、こうした枠組みからはみ出すものと言わざるを得ない》(118日付読売新聞社説)

 誤解のないように付け足せば、私は福島第1原発事故の総括もそこそこに再稼働に踏み切るやり方を批判してきた。規制委員会の言う安全性に疑問符が付くだけでなく、万一事故が起こった時のしっかりとした対応手順が策定されているのかも疑問である。

 第一、何のために再稼働するのかが分からない。電力の安定供給だけなら当面は火力発電で賄える。もっと本質的な原子力の見取り図が必要であるにもかかわらず、それが見えてこないのが最大の問題なのではないか。