保守論客の独り言

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ペンス米副大統領の対中演説について(1) ~安倍首相が「一帯一路」への協力を表明するのはなぜか~

《ペンス米副大統領は24日、ワシントンの政策研究機関「ウィルソン・センター」で行った「米中関係の将来」についての演説で、中国が尖閣諸島沖縄県石垣市)周辺に海警局の艦船を派遣するなどの「挑発行為」を展開していると批判した。香港問題では事態の平和的解決を強く要求したほか、知的財産権の侵害や不公平な貿易慣行、少数民族弾圧や南シナ海などでの覇権的行動の是正に向けトランプ政権として引き続き圧力をかけていく立場を強調した》(産経ニュース2019.10.25 09:26)

 非常に重要な指摘がなされているので、より詳細に検討してみよう。

 

In the East China Sea, in 2019, our close ally, Japan, is on track to scramble more fighter aircraft sorties in response to Chinese provocations than in any previous year in history. And China’s Coast Guard has sent ships for more than 60 days in a row into the waters around the Senkaku Islands, which are administered by Japan.

(2019年、東シナ海では、我が国の緊密な同盟国・日本は、中国の挑発に応じ、史上過去どの年よりも多くの戦闘機を緊急発進させる勢いである。そして中国の沿岸警備隊は、日本の施政下にある尖閣諸島周辺海域に60日以上連続して船を送っている)

 

 中国が尖閣諸島に手を出さないのは米国がこのように言ってくれているからである。もし在沖縄米軍が撤退すれば、尖閣諸島はおろか沖縄さえも中国の手に落ちるやもしれぬ。

 このことに対し産經新聞主張子は安倍政権を批判する。

《そもそもこうした事実は、安倍晋三首相が中国に対して言うべき発言である。トランプ政権の危機感とは対照的な最近の日本による対中融和姿勢への懸念が、ペンス氏による尖閣発言の背景にあるとみるべきだ》(10月26日付産經新聞主張)

 

China is also using its “One Belt, One Road” Initiative to establish footholds in ports around the world, ostensibly for commercial purposes, but those purposes could eventually become military.

(中国はまた、「一帯一路」構想を用い、表向きは商業目的ということで世界中の港に足場を築いているが、それらの目的は最終的に軍事的なものになる可能性がある)

 

《目に余るのは日本の領土への侵食や挑発だけではない。北海道大の男性教授が9月に中国当局に拘束されるなど、日本への不当な振る舞いは全く改まっていない。

 だが安倍首相は日中関係が「正常な軌道に戻った」とし、ペンス氏が演説で「軍事目的の恐れがある」とした巨大経済圏構想「一帯一路」に協力を表明した。来春予定される習近平国家主席国賓としての来日を前に波風を立てたくないといった態度だ》(同、産經主張)

 老獪な政治家ならこのような軽率な態度は示さないだろうし、慎重な政治家ならもう少し状況を見定めるべく態度を保留するに違いない。ペンス副大統領が警戒を促しているにもかかわらず、安倍首相があっさり「一帯一路」への協力を表明するのは一体なぜなのだろうか。【続】