保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

「昭和天皇の御真影を燃やし、灰を踏み付ける」動画をヘイトと言うのは「あきれる話」なのか(3) ~産經主張の朝日社説批判~

昭和天皇の写真を何度も燃やし、最後にその灰を土足で踏みにじる動画がそうである。昭和天皇とみられる人物の顔が剥落した銅版画の題は「焼かれるべき絵」で、解説には戦争責任を「日本人一般に広げる意味合いがある」とあった。

 韓国が日本非難に用いる、「慰安婦像」として知られる少女像も並んだ。英文の解説には、史実でない「性奴隷制」とあった。

 「時代の肖像-絶滅危惧種 idiot JAPONICA 円墳-」という作品は、出征兵士への寄せ書きのある日の丸が貼り付けられていた。作品名の英文などを直訳すれば「馬鹿な(間抜けな)日本趣味の円(まる)い墓」だ。

 「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」である天皇や日本人へのヘイト表現といえる。だから多くの人々があきれ、憤った》(1018日付産經新聞主張)

 朝日社説子は明らかにヘイトに当たらないと言い、産經主張子はヘイト表現だと言う。このことをもってしても、朝日社説子が<規制すべきヘイト行為とは何か、社会全体で議論を重ね、定義づけ、一線を引いてきた>と言うのがいかに独断的であるかが分かる。

 さて、残念ながら新聞媒体には限界がある。産經主張子は何がヘイトであるのかを出来るだけ具体的に書こうと努力してはいるが、やはりこの作品の問題は具体的映像や画像がなければ見えてこないものがある。昭和天皇御真影が焼かれる映像を見てヘイトだと思わないのは反日人士だけであろう。

《一方で、憲法が第21条で保障する「表現の自由」を守れという主張があった。だがヘイト表現は、国民は自由と権利を濫用(らんよう)してはならず、「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」とする憲法第12条と両立しない》(同)

 不文憲法派の私としては、米製成文憲法に頼ることは余りしたくはないが、大半の国民は憲法が根本規範であると思っているであろうから仕方がない。産經主張子も言うように、「表現の自由」には付則がある。

12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

  「自由」は濫用してはならず、「公共の福祉」に資するものでなければなければならない。今回の作品群が憲法違反であることは明らかであると大方の国民は思うであろうが、議論はあってよい。が、その議論すらすっ飛ばして「不自由展」を再開したのは暴走と言わざるを得ない。

朝日新聞は16日付社説で「『日本へのヘイト』との批判」を「あきれる話だ」と難じた。ヘイト行為に目をつむる朝日の主張には心底あきれる。社説は「規制すべきヘイト行為」は「社会全体で議論を重ね、定義づけ、一線を引いてきた」とし、「それに当たらない作品をヘイトと指弾する」のは「暴論でしかない」とした。

 どこに一線を引くかこの社説は語っていない。平成28年成立のヘイトスピーチ(憎悪表現)解消法に依拠するつもりなら乱暴な話で説得力はない。同法は、日本以外の出身者やその子孫への不当な差別的言動の解消を目指している。その解消自体は当然としても、同法には日本人を守るべき対象としていない大きな欠陥がある。

 そもそも法律以前の話でもある。左右どちらの陣営であれ、誰が対象であれ、ヘイト行為は「表現の自由」に含まれず、許されない。この当然の常識を弁(わきま)えず、天皇や日本人へのヘイト行為を認める二重基準は認められない》(同)【了】