保守論客の独り言

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毎日社説:勘違いだらけの戦後日本外交論(2) ~「米国なかりせば」とはならない~

《安倍政権で際立つのは、米国依存だろう。米国の影響力を通じて日本の権益を確保するという姿勢だ》(7月5日付毎日新聞社説)

 これは独り安倍政権だけの問題ではない。戦後を通して、日本は一貫して<米国の影響力を通じて日本の権益を確保するという姿勢>でやってきたのである。否、米ソ冷戦期は特にそうする以外に選択肢はなかった。

《米国は今や世界の不安定要因だ。トランプ氏はイランへの軍事作戦を「10分前に中止した」というが、衝突が起これば日本はどうするのか》(同)

 <どうするのか>と言われても、どうしようもないというのがその答えであろう。勿論、憲法をはじめとする現在の環境下では、たとえ後方支援という形であれ自衛隊が現地に赴き直接活動するということは難しい。湾岸戦争時と同様に、お金だけ負担して許してもらうというのが関の山なのではないか。

 が、そんなことより本当に米国とイランが戦争を押っ始めでもすれば、中東から十分な石油が入ってこなくなり、日本経済が大打撃を受けることは避けられない。もっと複眼的に物事を判断しなければ道を誤ることとなりかねない。

 これは日本だけの問題ではない。米国とイランがぶつかることは誰もが望まないことである。であるから、日本は米・イラン戦争が始まればどうするのかではなく、どうすれば米国とイランの衝突を避けることが出来るのかについてもっと真剣に考え、関係国と協働すべきである。

 が、戦後日本という国はこと軍事ということになるとからっきし駄目であって、そういういざこざから距離を置いてきたのである。イランとは長年友好的である日本が本来間に割って入りたいところであるが、米国の「コバンザメ」にそのような芸当が出来るはずもない。

《国際社会の多くの問題の行方はなお米国の判断にかかっている。大統領がだれであれ日本外交にとって強固な日米同盟は不可欠だ。

 同時に、米国一辺倒ではなく、周辺の大国である中露や不安定な北朝鮮と安定した関係をつくることも追求しなければならない》(同)

 このあたりが毎日新聞らしいところである。中国やロシア、さらには北朝鮮とまで<安定した関係>を作れと言う。が、関係とは相手があってのことであって、相手側が望まなければそのような関係を結ぶことは出来ない。

 この小学生にでも分かることが社説子には分からない。尖閣諸島のみならず沖縄まで自国のものだと主張する中国とどうして<安定した関係>を築けようか。ロシアもまた然(しか)りである。敗戦のどさくさに紛れて北方領土を強奪し、戦争で奪ったものは返さないと嘯(うそぶ)くロシアとどのような<安定した関係>を結べようか。北朝鮮など論外である。

 米国との同盟関係があるからまだしも、もしこれがなければこれらの国が日本目掛けて侵略してこないとも限らない。が、だからと言って日本が米国の言いなりとならねばならないというわけではない。米国に隷属してきた関係を解消し、同等の立場でものが言えるような関係を構築することこそが<追求>されなければならない課題である。

 その上で周辺諸国との友好を深める。そういう発想に立つべきなのではないか。【了】