保守論客の独り言

社会の様々な問題に保守の視点で斬り込みます

消費増税賛成派も反対派も根無し草(1) ~日本は世界一の借金国という嘘~

ここに来て野党が、おそらくは選挙目当てであろう、消費税反対の狼煙(のろし)をあげている。

 が、消費増税の話は「財政再建」の話が元となっており、この点に関しては野党も反対ではなかったはずである。

《日本の財政は先進国で最悪だ。国債や借入金を合計した「国の借金」は、2018年度末で1103兆円。社会保障費などの財源を赤字国債で賄ってきたため、借金が積み上がってきた。危機的な状況は誰の目にも明らかである》(712日付京都新聞社説)

 「国の借金」1103兆円というのは時代錯誤の単式簿記における負債であって、一般の会社と同様に複式簿記で資産と相殺する形をとれば、問題に値しないというのが高橋洋一嘉悦大学教授などが主張するところである。むしろ危機的な状況にないのはその目が節穴でない限り<誰の目にも明らか>と言うべきである。

 借金のほとんどが国内で賄われている国債であり、対外国債務が膨らんでいるわけではないということも重要な点である。

 国の経済規模が拡大すれば、当然流通するお金が増えなければならない。そこで国債を発行して調達してきたわけであるが、このやり方では帳簿上の借金が増えてしまう。仮に国債の代わりに政府が「通貨発行権」を用いて資金を調達していればこのような問題は起こらなかった、少なくともこのような大袈裟な話にはなり得なかった。

※「通貨発行権」については、例えば、私の楽天ブログ『「政府貨幣」発行を検討すべきだ(2)』2009.01.23)や『政府は赤字国債ではなく「政府貨幣発行特権の発動」を検討すべきだ》(2009.10.18)などを参照のこと。

自民党は消費増税と併せ、「財政再建を着実に実行」し、基礎的財政収支の25年度黒字化を公約する。しかし経済成長優先が根強く、実現性に疑問符が付く。

 対して野党は軒並み消費増税の凍結・反対を訴える。消費税は財政再建を進め、社会保障を支える重要な財源だ。対決姿勢を示す必要があるとしても、総じて財政破綻への危機感が薄いと言うほかない》(同)

 財政再建という観点からすれば、政府与党も野党も駄目だということであるが、財政再建のために消費増税が必須なのかということが十分検討されずにただ思い込みでこのようなことを言うのは無責任ではないか。

与野党ともに危機感を持ち、誰が、いつまでに、どのように重い借金を返済するのか、活発に論じてほしい。不都合な現実にも向き合わなければ、かえって有権者の不信を招くことになる》(同)

 必ずしも返す必要のない帳簿上の「借金」の返済を議論しても生産的でない。議論すべきはほかにある。(続)